人体のエネルギー産生系の形成の制御因子
【研究分野】医化学一般
【研究キーワード】
ATP合成酵素 / 転写因子 / 選択的スプライシング / サブユニット構成 / 転写制御 / ミトコンドリア / F,ATPアーゼ / PHによる制御 / 協調発現 / F_1・ATDアーゼ / 高次構造 / ミトコンドリア脳筋症 / ATP synthase / Bioenergetics / mitochondria / transcriptional control / biomembrane / MELAS / human genome / enhancer
【研究成果の概要】
細胞活動の基本であるエネルギー産生系の代謝調節は生体の反応系のなかでは最も変動量が大きく、変動速度も大である。そこで本研究では細胞の全体のエネルギー状態の検出機構を目標とした。人体細胞のエネルギー産生は短期的には呼吸調節能によるが、長期的にはミトコンドリアを中心とする諸タンパク質の合成と構造形成によっている。酸化的リン酸化の要素の構造遺伝子だけが、核DNAの他にミトコンドリアDNAの支配も受けている。その形成の制御はおもに核DNAの転写制御と推定され、ミトコンドリアDNA側では特有の翻訳制御が中心と考えられている。本年度は最終年度に当りATP合成酵素の主要サブユニットであるα、β、γ、の発現、ミトコンドリアのDNAの転写と複製の制御因子であるmtTF1の解析を進めた。すでにATPase活性にはαβサブユニットのみで十分であり、しかも組織共通である事を決定した。γはalternate splicingによって、第9エキソンを含む肝臓型と、それを欠く筋肉型の2種があることをJ.B.C.268,24950(1993)に報告した。これらαβγの上流には未報告の共通のシス要素が3種発見され、CATアッセイ法などでその機能を解析した。さらにγサブユニットのスプライシングには組織活動の結果pHが低下することによって筋肉型となること、この情報伝達はプロテインキナーゼCを介するトランス因子の合成が必要であるという重要な結果を得た(J.B.C.印刷中、1994)。ミトコンドリア(mt)DNAの複製と転写の両方を同時に制御するmtTF1にもalternate splicingによって長短2種のisoformが存在することを明らかにした(BBRC 194,544,1993)。DNAを除いたρ°株を用いてその意義を検討した(J.B.C.259,印刷中 1994)。本研究によって、人体のエネルギー供給源であるATP合成酵素の主要遺伝子の構造が初めて確定され、その制御因子について多くの重要な知見が得られた。成果は国際生化学分子生物学連合カンファレンス(欧)FAOBシンポジウム等で発表された。
【研究代表者】