著しく分散能力の高い幼生期を有する水産ベントスのコネクティビティー解析手法の開発
【研究キーワード】
海産ベントス / 浮遊幼生 / メタ個体群 / コネクティビティー / 次世代シーケンス / 貝殻 / カルシウム / ストロンチウム / EPMA / WDS / 検量線 / 温度 / 酸素安定同位体 / アラゴナイト / 腹足類
【研究成果の概要】
水産生物の資源量を決める重要な決定因子に、加入量の変動が挙げられる。個体発生初期に浮遊幼生期を持つ水産ベントスの場合、幼生期に起こる受動的な移流分散過程や死亡による不確定要素が大きく、各個体群への加入の規模を海洋環境に基づいて正確に予測するための手法の確立が喫緊の課題である。そこで本研究では、熱帯から温帯にかけての複数の野外個体群でサンプリングを行い、次世代シーケンサーを用いた集団規模での遺伝子解析、浮遊幼生期に作られた貝殻の微量元素分析、浮遊幼生の飼育実験を組み合わせることで、幼生分散を考慮した個体群間のコネクティビティーを定量化するための情報を収集している。
本年度は、EPMAに付属するWDS機能を利用することで、幼生期に形成される炭酸塩骨格(幼生殻)に含まれるストロンチウム(Sr)の濃度を正確に定量化するため技術的改善に必要なデータの収集に時間を費やした。これまで、WDSで得られた特性X線強度は、ZAF補正と呼ばれる近似的手法を介して炭酸塩のSr/Ca値に換算されてきた。しかしながら、一定温度での飼育下で作られたアラゴナイトの殻をWDSで分析したところ、ZAF補正による換算値には無視できない規模の推定バイアスが生じるだけでなく、大きなばらつきも発生していることが判明した。この問題を解消するために、Sr/Caの真値が既知である標本をWDSで繰り返し測定することで、検量線法に基づいて、特性X線強度を直接にSr/Caへと換算するための関数を導出することに成功した。以上の成果は質量分析学の国際的専門誌に投稿すべく、現在原稿を執筆中である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
狩野 泰則 | 東京大学 | 大気海洋研究所 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
福森 啓晶 | 東京大学 | 大気海洋研究所 | 特任研究員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)