変動環境に適応する頭足類の生活史可塑性ダイナミクス
【研究キーワード】
海洋生態学 / 資源生態学 / イカ / 生活史 / 表現型可塑性
【研究成果の概要】
海洋環境の変動に対し海洋生物の生活史が応答するメカニズムを理解することは、水産資源を適切に管理し持続的に利用する上で不可欠である。水産重要種であるケンサキイカは熱帯から温帯にかけて広く分布し、互いに交流のある複数の地域個体群から形成されると考えられるが、種内で顕著な形態的変異が見られる。これは可塑的な表現型変異であると考えられるが、変異の地域的・季節的出現状況や経験環境との関係は明らかとなっていない。本課題は、東シナ海から日本沿岸の広域にわたる調査により地域個体群間の交流、流れによる移送、経験する海洋環境と表現型変異との関係を明らかにし、ケンサキイカ資源の環境応答を解明することをめざしている。
2021年度は年次計画に基づき、①遺伝子解析による個体群構造の把握、②生活史特性の地域個体群比較、③平衡石による成長履歴解析、④微量元素分析による経験環境推定、⑤温帯から亜寒帯に生息する近縁種ヤリイカにおける調査とケンサキイカとの比較項目に関し、調査・実験を行った。ケンサキイカは2020年度までに収集した台湾・沖縄・種子島・対馬・神奈川・宮城より漁獲されたものを用いた。ヤリイカは2020-21年度に宮城にて漁獲されたものを用いた。集団中の性比、成熟個体の割合、成熟個体のサイズ頻度分布、生殖腺重量や成熟齢、孕卵数、卵サイズ等の成熟特性を測定した結果、地域や季節によりそれらに大きな違いが見られた。微量元素分析により孵化場所の環境を推定したところ、ケンサキイカは台湾以南がsource、日本がsinkとなるメタ個体群の構造を持っていることを明らかにした。また、ヤリイカの平衡石を用いた分析により、雄の繁殖戦術決定には孵化日が強く影響していることが明らかとなり、胚発生・孵化直後の環境条件が重要であることが示唆された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
入江 貴博 | 東京大学 | 大気海洋研究所 | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】15,600千円 (直接経費: 12,000千円、間接経費: 3,600千円)