A-ファクターおよび蛋白リン酸化による放線菌の二次代謝・形態分化の制御機構
【研究分野】応用微生物学・応用生物化学
【研究キーワード】
放線菌 / 自己調節因子 / 抗生物質 / 形態分化 / シグナル伝達 / A-ファクター / 抗生物質生産
【研究成果の概要】
(1)^3HラベルしたA-ファクターとの結合を指標とし、S. griseusよりA-ファクターレセプターたんぱく質を精製し、遺伝子(arpA)をクローニングした。ArpAは276アミノ酸からなり原核生物にみられるリプレッサータイプの転写制御因子と高いホモロジーを示した。arpAの塩基配列をもとにS. coelicolor A3(2)から2つのarpA相同遺伝子をクローニングした。2つの遺伝子はそれぞれ216アミノ酸からなるORFをコードしていて、おのおのの遺伝子破壊株は、胞子形成は正常であるが色素生産に変化がみられた。
(2)S. griseusの気中菌糸形成に関与する遺伝子amfRを含む転写単位のプロモーターはA-ファクターの非存在下で活性が高く、存在下で低かった。このプロモーター領域にA-ファクター非存在下でのみ結合するたんぱく質がゲルシフトアッセイにより同定された。このたんぱく質をゲルシフトアッセイを指標に精製したところ28kDaのたんぱく質が精製された。N末端・内部のアミノ酸配列決定によりPCR法により遺伝子取得に成功した。
(3)S. coelicolorの二次代謝を制御するSer-ThrキナーゼAfsKの相同遺伝子をS. griseusより取得しafsK2と名付けた。afsK2破壊株は胞子形成の効率がショ糖による高浸透圧下において顕著に低下していた。AfsK2を大腸菌により大量発現、精製を行い、in vitroリン酸化実験によりAfsK2の自己リン酸化を確認した。
(4)A-ファクター欠損株におけるA-ファクター合成遺伝子afsAのプロモーター活性が野生株に比べて低下していることから、その調節に関与する遺伝子がafsAを含む欠失領域に存在していることが示唆され、afsA遺伝子の周辺領域の塩基配列の決定を行ったところ、afsAの上流に原核生物に広く分布する転写調節因子と相同性のある遺伝子が見出された。
(5)ストレプトマイシン生合成遺伝子群内のstrRはA-ファクター依存性転写因子(Adp)により転写活性化が起こることが分かっていた。このAdpをゲルシフトアッセイを指標に精製したところ、最終的にSDS-PAGE上で40kDa付近に近接した二本のバンドを得た。
S. coelicolor A3(2)の染色体DNAをS. lividansにショットガンクローニングすることによって大量の色素性抗生物質アクチノロ-ジン生産を誘導する約1.2kbのDNA断片を取得した。1.2kbの断片中にはORFが2つ存在し、そのうちの1つは低分子量チロシンフォスファターゼと非常に高い相同性を示した。大腸菌により大量発見を行い、in vitroにおいてフォスファターゼ活性を検出した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
西山 真 | 東京大学 | 生物生産工学研究センター | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(B)
【研究期間】1994 - 1995
【配分額】7,600千円 (直接経費: 7,600千円)