日本におけるタケ類の開花現象の実態とその生態系影響
【研究キーワード】
竹林 / ハチク / 大規模開花 / 一斉開花 / 分布 / 更新動態 / タケ亜科植物 / タケ類 / 更新 / データベース / 画像解析 / 開花 / 動態 / 構造
【研究成果の概要】
1)2010年代から生じている西日本におけるハチクの大規模開花の背景として,日本における竹林の分布を自然環境保全基礎調査の全国植生調査データベース(環境庁)を用いて解析した。マダケ属は九州から東北にかけて広く分布していたが,ハチクはモウソウチクよりも太平洋側にも偏在する傾向にあった。また,ハチクは落葉広葉樹林などの比較的明るい群落内に出現しやすい一方で,群落の最上層の優占種となっている地点は少なかった。ハチクはモウソウチクよりも高木との競争で劣勢となりやすく,常緑広葉樹林などの厳しい被陰に晒される場所では優占度を高めにくいことが示唆された。ハチクの開花後の枯死と実生更新の失敗は,高木との競争においてさらなる劣勢を促しうる。
2)ハチク開花林における植生調査・毎ラメット調査では,開花後に生残していた地下茎から発生したと考えられる矮小再生ラメットが,広葉樹の侵入拡大にともなう光環境の悪化によって密度を激減させながらも,5年以上にわたって持続していた。過去にマダケで指摘されていたような栄養繁殖による更新の可能性を診断するため,生残している矮小再生ラメットの生育高と受光環境との関係の解析を開始した。ハチク開花林の近隣にマダケ林(非開花)が存在する地点では,ハチクの枯死・倒伏後にマダケ(通常ラメット)の侵入によって矮小再生ラメットが被陰されていた。ハチクの矮小再生ラメットの持続は,高木や他のタケ類の負の影響の小さい林縁や林道沿いなどに制限される可能性が高い。
3)西日本を中心にタケ類の開花地を引き続きGoogle Map上に記録した。ハチク(および近縁種のクロチク)以外にもモウソウチクやキンメイチクなどの局所開花が各地で散発している。開花竹林の遺伝構造および開花時の栄養状態や開花後の物質循環に対する影響の解析のために,各地におけるハチクの生葉の採取と解析の準備をさらに進めた。
【研究代表者】