植物は自らが過去に経験した光環境の情報をどのように処理・利用しているのか?
【研究キーワード】
光順化 / LMA / クロロフィル / 光合成 / キュウリ / 白色LED / PPFD / モデル / LED / 生育モデル
【研究成果の概要】
本研究の目的は、脳という記憶・情報処理器官を持たない植物が、いかにして自身が経験した環境、特に光強度の時間変動の情報を処理し、自身の「体づくり」、すなわち環境に応じた生理的・形態的特性の変化に利用しているのかを、数理モデルで表すことである。このことは、施設園芸において植物生育や収量を予測し、望ましい特性を有する植物を環境制御によって作り出すなど、植物生産の高効率化を図る上で重要であると考える。
本年度は、昨年度に引き続き、出葉後の明期における光合成有効光量子束密度(PPFD)の経日変化が、個葉の生理的・形態的特性に及ぼす影響を、キュウリ第1本葉をモデル実験系として、室内実験により調べた。播種後11~16日目の日ごとの明期PPFDの異なる種々の試験区を設定した。播種後16日目に、光順化に関する生理的・形態的特性として、葉面積あたり葉乾物重(LMA)、クロロフィル(Chl)a/b比、最大純光合成速度(Pnmax)、最大カルボキシレーション速度(Vcmax)および最大電子伝達速度(Jmax)を評価した。その結果、(1)種々のPPFD条件において、過去の日ごとの明期PPFDに固有の重みを与える加重平均PPFDを用いることで、過去の単純平均PPFDを用いるよりも、LMAをより精度よく推定することができた。(2)Pnmax、Vcmax、およびJmaxについては、加重平均PPFDと単純平均PPFDとで、推定精度はほぼ同程度であった。(3)Chl a/b比の推定精度は、加重平均PPFDと単純平均PPFDのいずれにおいても高くなかった。また、特に(2)の推定においては、日ごとの明期PPFDのみならず、過去からのPPFDの変化量の情報をも考慮することで、推定精度を高めうる可能性が示された。これらの成果をまとめ、論文として公表した。
【研究代表者】
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2019-06-28 - 2023-03-31
【配分額】6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)