アンデスにおける植民地的近代―副王トレドの総集住化の総合的研究
【研究分野】文化人類学・民俗学
【研究キーワード】
文化人類学 / 民族学 / 西洋史 / 考古学 / エスノヒストリー
【研究成果の概要】
1570年代、スペイン統治下のアンデスにおいて、第5代ペルー副王フランシスコ・デ・トレドが実施した先住民の総集住化は、植民地支配体制の確立や先住民社会の変容において重要な役割を果たしたと考えられてきた。しかし、政策のスケールの大きさや現存史料の乏しさゆえ、その実態解明は進んでいなかった。本研究では、トレドがアンデス各地に派遣した巡察師が作成した納税額査定記録を網羅的に収集し、精査することで、総集住化の対象となった先住民人口や建設された町の位置を含めた正確なデータを入手した。そして、そのデータを人文情報学の道具と方法により多角的に分析し、総集住化の実施形態や直接的影響、波及効果を解明した。
【研究の社会的意義】
アンデス先住民の総集住化に関する従来の研究は、植民地当局に焦点を当てて政策の形成や展開を辿るものや、特定の地域や民族集団に焦点を当てて政策の実施形態や効果を解明するものが主流だった。他方、アンデス全域を視野に収め、どこにいくつの町が建設されたのかを具体的に解明した研究は存在しなかった。そのため、政策全体の評価は定まっていなかった。本研究では、納税額査定記録に基づいて537の民族集団と881の町を同定し、どの集団からどれだけの数の人びとがどの町に移住させられたのかを再構成した。そして、その再構成に基づいて、総集住化の全体的特徴と地域的特性を浮き彫りにした。
【研究代表者】