篩部局在性の果樹ウイルスに関する研究
【研究分野】植物保護
【研究キーワード】
植物ウイルス / 酵素結合抗体法(ELISA) / ウイルスの理化学的性状 / 果樹ウイルス / 電子顕微鏡 / 血清学的診断 / ウイルスの精製 / 核酸 / 蛋白質の分析 / ウイルスの増殖
【研究成果の概要】
本研究は、果樹に発生する篩部局在性の重要ウイルス(ブドウ味無果ウイルス(grapevine ajinashika virus,GAV)、ブドウ萎縮ウイルス(grapevine stunt virus,GSV)、ブドウ葉巻ウイルス(grapevine leafroll virus,GLRV)、モモ黄葉ウイルス(peach yellow leaf virus,RYLV)、カンキツ葉脈黄化ウイルス(citrus vein yellowing virus,CVYV))の各々について、生物学的および理化学的性状を究明し、さらに生物工学的手法を用いて、それらの診断技法を開発し、防除法の確立に寄与することを目的として行った。
その結果、GAV・GSV・GLRVの各々について、病組織を用いてウイルスを精製し、平衡密度勾配遠心法・電気泳動法などにより、粒子・ゲノム核酸・外被蛋白質の理化学的性状を研究した。また、GAV精製試料については家兎に、GLRVについてはマウスに注射し、それぞれ抗血清および腹水抗体を作製した。得られた抗血清および抗体を用いて寒天ゲル内二重拡散法および免疫電子顕微鏡法によりウイルスの検出・他ウイルスとの血清関係について調べた。またELISAによりGAVの検出診断を試み、その発生分布を調べた。本研究で扱った4種のウイルスの各々について細胞内所在・増殖様式を電子顕微鏡を用いて調べた。以上より、GAVは感染組織の各種篩部細胞で増殖する径約25nmの小球状ウイルスで、分子量約23,000の1種の外被蛋白質および分子量約2.3×10^6の一本鎖RNAよりなる。以上の性状はLuteovirusのそれと非常に類似している。またGLRVはGAV同様篩部局在性で、約11×20,000nm、ピッチ約3.7nmの紐状ウイルスである。GSVはGAVとその理化学的性状において類似しており、血清学的に類縁関係にある。PYLVおよびCVYVについては、さらにその性状の究明が必要と思われた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
山下 修一 | 東京大学 | 農学部 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1988
【配分額】1,600千円 (直接経費: 1,600千円)