新規神経細胞成長因子の検索とその性質の検討
【研究分野】応用微生物学・応用生物化学
【研究キーワード】
神経成長因子 / シグナル伝達 / 神経突起伸長 / PC12 / 突起伸長 / 細胞応答 / 分化因子
【研究成果の概要】
各種、神経疾患の治療薬として期待される新規神経成長因子の探索を行い、グリア細胞株SF268培養上清に活性を認めたので、精製を試みた。1000倍以上精製された段階で、本因子はプロテアーゼに対して感受性であることから、ペプチド性で質量解析法により解析可能であることが証明された。続いて、トリ初代培養神経細胞への効果を調べた。10日胚由来の細胞では、脳、脊椎、及び後根神経節の神経細胞すべてに対して、突起伸長活性を示した。本因子には中枢、末梢の両方の神経細胞に対する活性があるのもと考えられる。次に、本因子による細胞内情報伝達について検討した。NGFなどのneurotrophin類はチロシンキナーゼ型受容体を用いる。そこで、抗リン酸化チロシン抗体を用いて、情報伝達因子の活性化を検討した。NGFでPC12細胞を刺激するとNGF受容体のリン酸化が顕著に検出され、その他NGF受容体によってリン酸化されたと思われる数種のタンパク質が検出された。また、MAPキナーゼのリン酸化も検出された。これに対し、本因子で刺激した場合はMAPキナーゼのリン酸化は検出されるものの、その他のチロシンリン酸化タンパク質のバンドは検出されなかった。続いて、NGFによる神経突起伸長を阻害することがわかっているMAPキナーゼ阻害剤PD98059、p38阻害剤SB203580、及びPI3キナーゼLY294002の効果を調べたところ、PD98059とLY294002は有効であったが、SB203580は効果がなく、本因子による突起伸長はNGFなどの既知のneurotrophinとは異なる調節を受けていることが示唆された。以上のことから、本因子はユニークな活性を有し、さらに検討を進める価値があると思われた。現在、精製がほぼ最終段階まですすんでいるため、今後は質量解析法による解析をおこない、遺伝子の同定を行う予定である。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1998 - 1999
【配分額】2,000千円 (直接経費: 2,000千円)