メリクロンロボットによる植物組織培養の自動化に関する研究
【研究分野】機械力学・制御工学
【研究キーワード】
バイオテクノロジー / 植物組織培養 / マイクロロボット / 形状記憶合金 / カルス / プロトプラスト / 自動化技術 / 位置センサ / バイオテクノロジ- / ロボット
【研究成果の概要】
組織培養により得られた長さ2mm程度の幼苗やカルス細胞塊を培養器間で移植するマイクロロボット(メリクロンロボットと呼称)を開発,試作した。本ロボットハンドはアクチュエータに形状記憶合金を使用しており,苗やカルスを傷めることなく把握して寒天培地から植出し,別の寒天培地に植付けることができる。苗の位置検出は培地に微弱なハルス電流を流すと,苗が一種のアンテナとなり電波を発振する現象を利用している。この検出精度に及ぼす受信アンテナ形状の影響を詳しく調べるとともに,受信アンテナをハンド部と一体化し小型化を図った。苗の性状判定はカラーセンサにより行う。以上の装置を統合した移植システムをユニツト化し,2ユニツトからなる全自動苗移植システムを試作,完成した。本システムでは分散型の制御方式を取り入れており,各ユニットは単体でも使用できる。また,室内を無菌維持するため電話回線による遠隔操作とした。システムの性能試験を行った結果,1本の苗を約20Sで移植でき,実用化の目処を得た。さらに,カルスを対象として,環境制御が可能な試作インキュベータにロボットを内蔵したカプセル構造型の移植システムを開発した。また,上記植物アンテナセンサ方式の応用として,植物器官やカルス細胞塊の電波像を得る装置を新たに試作した。その結果,電波像が形状認識や生理状態計測用センサとして利用できる可能性を見出した。さらに,遠心分離器を使用しない簡単な構造からなるプロトプラスト自動製造装置を試作した。これにより均一な大きさのプロトプラストが得られる。また,Dielectrophoresis現象を適用した溶液チャンバ内におけるプロトプラストの運動制御装置を試作し,1対1細胞融合の自動化についても検討した。以上の結果を基に,植物組織培養の自動化システム開発における設計理念について考察し,既存技術との整合性など現状における実用上の問題点を明らかにした。
【研究代表者】
【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1988 - 1989
【配分額】2,200千円 (直接経費: 2,200千円)