高効率多目的排出担体創製へ向けた変異型MscLの電気生理、分子動力学的特性解析
【研究キーワード】
メカノセンシティブチャネル / MscL / 分子動力学シミュレーション / イノシン酸 / )物質排出担体 / パッチクランプ法
【研究成果の概要】
一般的にメカノセンシティブチャネルは細胞が低浸透圧ストレスに晒された際に開口することで膨圧を下げる安全弁として機能していると考えられている。これまでの研究により、グルタミン酸生産菌として知られているCorynebacteriumglutamicumにおいて、このチャネルが非低浸透圧ストレス下であるにもかかわらず細胞内で合成されたグルタミン酸を細胞外へ排出する物質排出担体として機能していることを明らかにしてきた。本研究課題においてメカノセンシティブチャネルの一種であるMscLの変異体がイノシン酸の生合成を強化した大腸菌において生産性を向上することを明らかにした。MscLのG30E変異体とG46D変異体はともに野生型と比べて開口しやすくなっているが、イノシン酸の生産性はG46Dのみで顕著に向上した。
全原子分子動力学シミュレーションにより、G30E変異型G46D変異型ともに、開口性に影響すると考えられる細胞膜脂質分子との相互作用、水分子との相互作用は、野生型より安定であり、細胞外ループ領域のゆらぎが野生型よりも小さいこと、開口に伴うTM1ヘリックスの回転が野生型よりも大きいことが示唆された。これらが変異型MscLが野生型よりも開口しやすくなる原因であることが推測される。
またTM1ヘリックスに注目すると、G30E変異型は野生型と比べ大きく変化していないものの、G46D変異型は38番目のアラニン部分で大きくねじれていることが示唆された。この部分はTM1とTM2の相互作用に関与していると考えられることから、G46D変異型MscLがIMP生産性を向上させた理由の一つであることが予想された。
G46D変異体に生じたねじれを解消する目的でA38Vを追加した二重変異体を作成した。この二重変異体を導入したイノシン酸生産株ではG46D単変異体と比較してイノシン酸生産性が向上する結果を得た。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)