分子生物学的解析による森林昆虫類の個体群分化と伝播経路の解明
【研究分野】林学
【研究キーワード】
ミトコンドリア / 森林昆虫 / オサムシ / カミキリ / トビケラ / 遺伝子浸透 / 交雑 / 伝播経路 / 分散 / クリタマバチ / オオオサムシ亜属 / スギカミキリ / ミトコンドリアDNA / ND5 / COII
【研究成果の概要】
本研究は森林昆虫類の個体群分化と伝播経路についてDNAの多型から解析しようとしたものである。対象として地理的変異の研究が進んでいるオサムシ類,森林害虫として重要なカミキリ類,水系に依存する水生昆虫類を選び,ミトコンドリDNAの塩基配列から解析を行った。
オサムシ類の解析は主に関東地方西部・東海地方東部で分布を接するアオオサムシとシズオカオサムシについて,ND5領域1083bpを用いて行った。この結果,アオオサムシの分布域からシズオカオサムシの分布域へ一方向の浸透が認められた他,近接するミカワオサムシ由来のミトコンドリアを持つアオオサムシやそのアオオサムシからミトコンドリアの浸透を受けたと考えられるシズオカオサムシまで発見できた。このグループにおいて異所的分化後の二次的接触で,交雑を介した遺伝子浸透による網目状進化は分布境界域付近で大規模におこっているようである。
森林害虫では,スギカミキリについてCOI-COII領域1150bpの解析により,最終氷期にはスギの退避地に分布を縮小していたと考えられるこの種が太平洋側と日本海側の異なるルートで分布を拡大したと考えられた。中国西部でポプラの大害虫となっているツヤハダゴマダラカミキリとキボシゴマダラカミキリはCOII領域320bpの解析で分布境界域で雑種が広範に形成されていることが明らかになった。このように森林害虫の伝播経路の解明における分子マーカーの有効性が示された。
水生昆虫に関しては関東地方で形態的な地理的変異の認められるウルマーシマトビケラについて,COII領域320bpの増幅に成功し,今後このグループの分子系統や分散経路の解明に応用できるメドをたてることができた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
加賀谷 隆 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】1999 - 2001
【配分額】25,480千円 (直接経費: 24,700千円、間接経費: 780千円)