脳・脊椎統合運動回路モデルの作製とALS発症メカニズムの解明
【研究キーワード】
ALS / マイクロデバイス / オルガノイド / 神経変性疾患 / 運動ニューロン / iPS細胞 / マイクロ流体デバイス / 感覚ニューロン / 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
【研究成果の概要】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動神経細胞が細胞死を引き起こすことにより、全身の筋肉が動かなくなる神経変性疾患である。日本では、1974年に難治性疾患の特定疾患に認定され、原因究明に向けて動物実験などの研究が行われてきた。その結果、様々な遺伝子変異と発症の関連性について明らかになりつつあるが、ALSの発症メカニズムは解明されておらず、根本的な治療方法は未だ存在しない。近年、ヒトの体から採取した運動ニューロンや骨格筋細胞をシャーレ上で培養する、2次元in vitro毒性試験法が確立しつつある。この手法は、モデル動物からヒトの単一細胞へと評価対象を移すことで、生命現象をある程度把握することを可能にした。特にiPS細胞から作製されるオルガノイドと呼ばれる三次元の組織体は、その発生学的な家庭を模倣しその構造や機能をよく再現するモデルとして有効である。しかし、生体の構造は複雑で、単一細胞の挙動は本来の生命現象とは大きく異なるという問題がある。特に、運動神経、感覚神経、骨格筋細胞などの様々な細胞が複雑に絡み合う「脳・脊椎運動回路」の実現のためには、従来の2次元の培養系では、正確に生体内の動態を再現することは不可能である。このことが、これまでの創薬を困難なものにしてきた。これは単一のオルガノイドを作製することだけでも再現不可能であり、組織感の相互作用を再現し理解することが必要である。本研究の目的は、運動に関わる組織、具体的には、運動と感覚神経回路、筋肉組織、更にはシュワン細胞からなる「3D脳・脊椎統合運動回路モデル」をオルガノイド技術を応用することによって生体外で作製し、ALS病理のメカニズムの一端を解明することである。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2020-04-01 - 2022-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)