超解像イメージングによるスパインシナプスの動態解析
【研究キーワード】
シナプス / 超解像顕微鏡 / 神経科学 / 細胞生物学 / イメージング / 超解像技術
【研究成果の概要】
記憶や学習といった脳機能には、シナプスが新たに作られ、外部からの刺激によって可塑的に変化し、また数年以上もの長期にわたって維持されることが必要である。シナプスが変化する過程で、スパインの頭部体積の増減やシナプス小胞の増減に関連して軸索末端の形態変化が起こる。またスパイン頭部や軸索末端から微細な突起が伸びだす様子も知られており、両者が接触を介して複雑な情報交換をしていることが示唆される。シナプスとその近傍で起こる複雑な細胞間相互作用を明らかにし、その機能的な意義を生体で検証することは、記憶や学習といった脳機能を理解する上で重要な問題である。
本研究では、シナプスの可塑性と安定性に関わる分子メカニズムの解明を目指し、興奮性シナプスを構成する樹状突起スパインと軸索末端を従来の光学顕微鏡の限界を超えた分解能で同時にタイムラプス観察する基盤技術の確立を目的とする。さらに、より生体内に近い状態でのシナプスの形態と動態を高い分解能で観察することを目指す。これらにより、記憶・学習の細胞生物学的な構造基盤の理解を進める。
昨年度までに培養神経細胞のスパインと軸索末端を同時に高分解能で観察する基盤技術が確立されたので、令和3年度は生きた動物においてシナプス可塑性が起きたシナプスをナノスケールで形態情報を取得するための技術基盤の構築を優先的に進めた。新たに膨張顕微鏡法を導入し、この技術とこれまで開発を進めたスパインの三次元形態解析技術との組み合わせを行った。膨張顕微鏡法を用いることで、これまでより厚みのある標本でスパインの形態解析を実施することが可能になった。次に海馬錐体神経細胞を標識する遺伝子導入技術、アデノ随伴ウイルスによる標識または子宮内電気穿孔法による標識をそれぞれ試し、海馬CA1-CA3領域の錐体細胞を疎に標識する条件を見出し、膨張顕微鏡法によるスパイン形態解析を実施した。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2020-04-01 - 2024-03-31
【配分額】3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)