生体組織由来脱細胞化小口径動脈グラフトの開発と大動物実験による検証
【研究キーワード】
脱細胞化組織 / 生体内組織再構築 / 自己組織化 / 下肢動脈血管グラフト / 冠動脈バイパスグラフト / 小口径グラフト / 脱細胞化血管 / 脱細胞化処理 / 組織工学 / 生体由来材料 / 冠動脈バイパス / 重症下肢虚血
【研究成果の概要】
本研究では、研究代表者が開発した厚い組織の組織構造と強度を保持する脱細胞化技術と滅菌技術を基盤とし、力学的特性を保持した内径3mm程度の小口径血管を開発し、大動物実験で3カ月間血栓閉塞が起こらず開存する脱細胞化グラフトを実現することを目的としている。1年目の本年度は、研究者代表者の基盤技術を応用してウシ小口径動脈血管を脱細胞化処理および滅菌処理し、組織構造と力学的特性を保持する処理条件の決定を目指した。また、ヒト血液を循環する拍動循環回路を開発し、脱細胞化動脈血管の血栓性を評価した。
具体的には、内径3mmで長さ20cmのウシ由来動脈血管を、マイクロ波照射および拍動循環の双方を同時に作用させ、低濃度の界面活性剤溶液を用いて脱細胞化処理する方法を研究開発した。脱細胞化後のDNA残留量は、乾燥組織重量当たり8ng/mgとなり、米国で市販されている脱細胞化ブタ小腸粘膜下組織の臨床経験で炎症が起こらない基準とされている乾燥重量当たり50ng/mgと比較して顕著に少ない安全性の高い脱細胞化血管を作製することを達成した。さらに、血管組織の構造を保持する乾燥条件を見出すことができた。
脱細胞化、乾燥、滅菌処理をして再水和した脱細胞化小口径動脈血管について内圧と径の関係を計測してスティッフネスパラメータを算出した結果、未処理の血管と同等のスティッフネスに維持できることがわかった。
さらに、血液性状を保持可能な完全大気非接触でヒトの冠動脈前下行枝の血流・血圧を模した血液循環シミュレータを開発し、ヒト健常ボランティアから採血した新鮮血液を循環させ、脱細胞化動脈血管の血栓性を評価した。その結果、未処理の脱細胞化血管では血栓閉塞したが、ヘパリン処理した脱細胞化血管では開存し、血栓形成を抑制し得る知見を得た。
【研究代表者】