ファージセラピーを目指した感染動力学に関する研究
【研究分野】生物・生体工学
【研究キーワード】
ファージ / 大腸菌O157:H7 / レセプター / ファージセラピー / 緑色蛍光タンパク / 病原性大腸菌 / 宿主認識 / 蛍光検出 / バクテリオファージ / 外膜タンパク質 / LPS / 病原性大腸菌O157 / 大腸菌
【研究成果の概要】
健康なブタ糞便からスクリーニングされた大腸菌O157:H7特異的ファージをPP01と命名し、PP01の宿主認識機構を解析した。大腸菌O157:H7のOmpC遺伝子をプラスミドにクローニングし、耐性菌をそのプラスミドで形質転換すると、PP01に対する被感染性が回復した。さらにOmpC欠損大腸菌K12(W3110)を同プラスミドで形質転換すると、PP01に対し被感染性を示した。これらの事実より、大腸菌O157:H7のOmpCがPP01ファージのレセプターとして機能していることが分った。また、ファージのテールファイバー先端に位置するgp38タンパク質がOmpCを認識することが分った。大腸菌O157:H7と大腸菌K12(W3110)のOmpCを比較するとアミノ酸配列で97%の相同性を示す。gp38はこの僅かなアミノ酸配列の違いを識別できる分子センサーといえる。
PP01ファージ単独では大腸菌O157:H7を抑制することが出来なかった。そこで複数のファージを用いることで、大腸菌O157:H7のコントロールを試みた。一種のファージと宿主とを長時間培養すると、ファージ耐性菌の出現が見られる。宿主のファージに対する耐性機構はファージによって異なる。ファージを複数混合すると、両ファージに対して宿主が耐性能を獲得する必要があるため、耐性菌が出現するまでの時間が延長された。
PP01ファージは大腸菌O157:H7に対し特異的感染性を示した。そこで、PP01ファージの頭殻に緑色蛍光蛋白質を発現することにより、蛍光標識PP01を分子構築した。蛍光標識ファージは野生株と同様に大腸菌O157:H7に特異的に吸着し、紫外線を照射することにより、被吸着大腸菌O157:H7を緑色に可視化することが出来た。また、蛍光標識ファージは、生きてはいるが培養できない状態(VBNC)の細胞に対しても吸着することが出来、培養法では検出が困難とされたVBNC状態の大腸菌O157:H7を数十分以内で検出することを可能とした。
【研究代表者】