大規模非同期パルス伝搬ネットワークの実現とその計算原理の解析及び応用の研究
【研究分野】工学基礎
【研究キーワード】
脳のモデル / ニューラルネットワーク / 実数演算 / アナログVLSI / 非線形システム / 力学系 / ニューロンモデル / ダイナミカルセルアセンブリ / ダイナミカルアセンブリ / 能のモデル / 時空間情報処理 / アナログ情報処理 / 動的セルアセンブリ
【研究成果の概要】
近年、脳の生理学的研究および数理的な理論研究より、脳特に大脳皮質中のニューロンは、多数の他のニューロンからの活動電位の詳細な時間情報を利用して高度な情報処理を実現しているのではないかとの仮説が脚光を浴びている。このようなニューロンはいわゆるコインシデンスディテクタとして動作し、複数のニューロンの協調的な(相関の強い)発火により情報が表現され、処理されている。このようなニューラルネットワークモデルにおいては、ニューロンの内部状態の連続性と、パルス伝搬時間の連続性が重要になる。すなわち、値も時間も連続な系として実現されていなければならない。このような、連続値・連続時間系では、実数を直接扱うことができるため、従来の有理数しか扱えないディジタル計算機に比べ、格段に高度な計算が実現できる。
本研究では、連続な時間も値も扱うことが可能なアナログ電子回路で新しいニューロンモデルを構築し、これを用いて脳がおこなっている情報処理様式を研究することが目的である。そのため、非同期パルスニューラルネットワークモデルをアナログCMOS半導体技術を用いて集積回路化した。回路化したニューロンは、入力される多数の重み付けされた電圧パルスの入力タイミングに敏感に反応し、これらのパルスの一致性を検出して発火する。さらに、どのようにパルスが入力されてきたかの時間履歴によりその発火のタイミングを連続的に変化させる。また、これらニューロンをつなぐシナプスおよび軸索回路では、パルスの伝搬遅延を連続時間で変更でき、さらに結合重みも可変とした。これらの回路をつなぎ合わせて構成したネットワークでは、パルスの相関により情報をコードしているニューロングループが構成されるような、ダイナミ力ルセルアセンブリの自己組織化が可能である。このような、連続時間で連続値による計算は、従来のディジタルコンピュータでは実現不可能であり、本研究により初めてその実装の可能性が示された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
SUYAMA Ken | コロンビア大学 | 電気工学科 | 助教授 |
合原 一幸 | 東京大学 | 工学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】国際学術研究
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】2,800千円 (直接経費: 2,800千円)