毛細管圧力を利用した放射性廃棄物の安定的処分の可能性に関する基礎的研究
【研究分野】資源開発工学
【研究キーワード】
多孔質媒体 / 粘性係数 / 界面張力 / 毛細管圧力 / しきい圧力 / 二つの無次元数
【研究成果の概要】
本年度は、昨年度に引き続いて以下の実験・検討を行った。
昨年度と同様に、変形しない多孔質媒体を代表する材料としてガラスビーズを用い、不混和な流体が媒体内を移動する条件、形態に関して基礎的なデータの収集を行った。特に、流体の粘性係数の違いの影響を評価するために、昨年度に用いたのとは違う非濡れ相流体としてケロシンを用いた検討を試みた。その結果、昨年度の結果と同様に、非濡れ相である流体が媒体内に侵入していくために必要な過剰な圧力(しきい圧力)は、流体の流速に依存することが再確認された。従って、この結果は流体の種類によらず一般的に起こる現象であると考えられる。また、しきい圧力の大きさの流体による比(ケロシン/オンジナオイル)(0.625)は、界面張力の大きさの比(0.45程度)に対してやや大きくなっているが、これが有為な違いなのか界面張力計測時やその他の実験誤差の範囲であるのかは、さらなる検討が必要とされた。
さらに、より自然な材料に近付けるために、均質なフィルター材を用いた実験を行った結果、定性的にはガラスビーズで得られたものと同様の結果が得られた。
結論としては、以下のことが言えると考えている。
廃棄物を含んだ領域を粗粒な材料で囲み、その中を非濡れ相流体で飽和させることによって長期にわたって毛細管圧力差を用いた安定的な廃棄物処分の可能性が検討された。完全に静的な条件においては、この安定性は保たれるはずであるが、その周辺に濡れ相(地下水)の流体流動があった場合には、それに伴った非濡れ相流体の移動の可能性がある。本研究の結果、多孔質媒体中では、流速が非常に遅い場合には、しきい圧力に期待することが現実的ではなく、また、非濡れ相流体は非常に小さい非濡れ相飽和率で移動することが可能となるために、本研究の最初のアイディアであった毛細管圧力を利用した安定的処分は、実際的な技術ではありえない可能性が高いことが示された。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】2,300千円 (直接経費: 2,300千円)