層状ケイ酸塩鉱物-水反応機構:原子レベルでの解明
【研究分野】岩石・鉱物・鉱床学
【研究キーワード】
層状ケイ酸塩鉱物 / 電子顕微鏡 / 風化 / 溶解
【研究成果の概要】
地球表層では、鉱物ー水ー大気反応は物質の移動や元素のグローバルサイクルにおいて重要な役割を果たす。野外で風化した岩石・鉱物など固相の解析と、実験室で溶解させた岩石・鉱物など固相の解析及び反応溶液など液相の解析をもとに層状ケイ酸塩鉱物-水反応の機構を原子のレベルで把握することを目的とした。天然試料では層状ケイ酸塩鉱物は一般には鉱物のドメイン内にVermiculiteを1層づつ形成する場合と、風化の初期の段階では直接溶解している場合があった。前者の場合についてはVermiculite化の機構がHRTEMにより原子レベルで明らかになった。黒雲母、緑泥石ともに2:1 layerの間のInterlayersの陽イオンの溶脱と交換が起こり、Vermiculite化する。特に緑泥石の場合はSi四面体のズレを伴うことがわかった。風化の初期の段階では直接溶解が黒雲母で観察された。この試料は室内の溶解実験でも同様にHRTEMを行ったので天然と室内の溶解過程の比較が可能となった。この場合、端面に微小なAl及びFe鉱物がFESEMで観察されるが、劈開面には殆ど観察されない。すなわち、端面近辺の溶液は局所的にバルクと化学的性質が異なる。文献値も併用して、EQ3NRを用いた熱力学的計算から溶液が二次鉱物に飽和してなくてもHRTEMではVermiculiteなどが観察されていることがわかった。HRTEMで黒雲母のドメイン中に二次鉱物が観察されない場合も、端面に微小なAl及びFe鉱物がFESEMで観察されことから、TEMなどで観察されるVermiculite等は必ずしもバルク組成を反映せず、端面近辺の溶液は局所的にバルクと化学的性質が異なると考えられる。即ち、層状ケイ酸塩の溶解に伴う初期の二次的な層状ケイ酸塩の形成は端面近辺の溶液の局所的性質によると考えられる。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
小暮 敏博 (木暮 敏博) | 東京大学 | 大学院・理学系研究科 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】11,900千円 (直接経費: 11,900千円)