高密度水素を利用した金属水素化物の合成と電子転移機構の解明
【研究分野】物性Ⅱ
【研究キーワード】
希土類金属 / 水素化物 / 構造転移 / 電子転移 / 高圧力 / 金属転移 / 高圧 / 金属水素化物 / 圧力誘起相転移
【研究成果の概要】
本研究は高圧下で誘起される希土類金属水素化物の構造・電子転移の機構解明を目標に実施された。希土類金属系の現象はイオン半径でスケールできることが知られていることから、それらの水素化物を対象にした高圧研究は金属水素化物の構造・電子状態の系統的な理解をもたらす。実際、我々が行なったスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)の3水素化物の一連の高圧研究によって、六方晶-面心立方晶の構造転移開始圧力がイオン半径でスケールされることが見出された。
YH_Xは、一連の希土類金属水素化物で観測された構造相転移と電子転移のいずれもが50 GPaまでの圧力範囲で観測されたことから、実験、理論の両面から詳しく研究された。バンドオーバラップによる絶縁体-金属転移は高圧領域で出現する面心立方晶相において23 Gpa付近で観測されて、電子バンド構造計算からフェルミ面は主として水素の1s軌道から構成されていることが示された。本研究の目的である「1s金属」が実現されたことになるが、これまでの低温高圧実験では超伝導転移は観測されていない。
YH_3で観測された長周期構造の出現とYH_Xで観測されたフォトクロミズムは金属水素化物に特徴的な現象である。六方晶と面心立方晶構造の中間相として現れる長周期構造では、バンド間電子遷移に伴う光学ギャップが加圧により急激に減少することが観測されており、水素原子の振動スペクトル測定結果と合わせて、金属格子内の水素原子の変位が水素-金属間の混成軌道状態の変化をもたらしていることが示唆された。フォトクロミズムは、光照射による電子励起が駆動力となって水素原子の金属格子間移動が起きているものとして解釈される。これらの現象の発見は水素原子のダイナミクス研究の重要性、今後の発展性を示す重要な成果である。
【研究代表者】