高速鉄道整備の地域イノベーションに与える影響に関する研究
【研究キーワード】
高速鉄道 / 地域イノベーション / 特許出願数 / 日本 / ケーススタディ / 国際比較 / イノベーション / 計量経済分析
【研究成果の概要】
本研究は,高速鉄道を対象とし,その整備が地域イノベーションに与える影響の有無とその因果効果を分析するとともに,その因果が生じるメカニズムを解明することにより,今後の我が国における新幹線整備ならびに新幹線技術の海外展開に向けて政策的示唆を得ることを目的とする.
今年度は,昨年度の国際比較分析に続いて,高速鉄道の地域イノベーションに与える影響把握を目的に,我が国を対象とした事例分析を行った.ここでは,1976年から2016年までの過去40年間を対象に,我が国の1,741市区町村をカバーするパネルデータを用いて,実証分析を行った.この分析では,市区町村レベルの特許出願件数が各地域のイノベーションを表すものと考え,市区町村の特許出願件数が負の二項分布に従うものと仮定した.高速鉄道の新規導入が地域のイノベーションに与えるインパクトを,複数年を対象とする差の差分析(Difference-in-differences analysis)を適用して統計的に推定した.その結果,高速鉄道開発が開発地域のイノベーションに統計的に有意に正の効果をもたらすことが示された.ロバストネス分析のため,傾向スコアマッチングを活用した差の差分析や操作変数法を用いた分析なども行い,分析結果の頑強性が確認された.また,分析の結果より,人口規模の小さい地方部における高速鉄道の地域イノベーションに与えるインパクトは,大都市部におけるインパクトよりも有意に大きいことも示された.これは,高速鉄道整備による地域間コミュニケーションの機会増加が、労働者数の少ない地方部において地域イノベーションを促進する上で重要な役割を果たす可能性のあることを示唆している.
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)