中小都市における検索履歴データを用いた動学的バス需要予測手法の開発
【研究キーワード】
経路検索履歴データ / 交通系ICカード / ビッグデータ / 公共交通計画 / 交通需要予測 / 経路検索サービス / 中小都市
【研究成果の概要】
本研究課題は,交通行動を直接捕捉するデータが不足している地方中小都市を対象に,経路検索サービスの検索履歴データを用いた交通需要予測の可能性を検証するとともに,移動希望に応じたバス運行計画の立案方法を提案することを目的とする.
初年度の成果から地方中小都市を対象とした検索履歴データを利用しようとすると,経路検索数が発着地の組み合わせや日によっては0件となる0サンプル問題,中心部などの一部の駅を起終点とした経路検索数が多く,郊外部を起終点とした検索数が少ないというデータ偏在性の問題が発生することがわかった.これら検索履歴データの特徴を踏まえたうえで,経路検索行動と駅周辺環境との関連性をBayesian Adaptive Lasso Tobit分位点回帰モデルによって記述し,経路検索数が多くなる都市構成要因を明らかにし,交通系ICカード利用数の多寡に影響する要因との比較をおこなった.その結果,経路検索システムと交通系ICカードでは利用されやすい状況が異なるため,両者を単純に関連づけるようなモデル化では,経路検索数の増減で交通系ICカード利用数の増減は予測できないことがわかった.そこで,(1)2変量状態空間モデルによって経路検索数と交通系ICカード利用数の突発的需要を抽出し,(2)重み付き回帰モデルによって突発的需要変動間の関係性を定量化するという2段階分析方法を構築した.分析の結果,従前モデルとの予測精度の比較から,提案手法の有用性が確認できた.すなわち,経路検索数と交通系ICカード利用数に包含される突発的事象に起因する需要部分を関連づければ,経路検索数を用いることで交通系ICカード利用数の予測精度は高まることを示すことができた.
【研究代表者】