結晶欠陥場の微分幾何学的描像と複雑系の熱・力学に基づく集団転位の自己組織化モデル
【研究分野】機械材料・材料力学
【研究キーワード】
集団転位 / 自己組織化 / 複雑系 / 固執すべり帯(PSBs) / 空間パターニング / 幾何学的結晶欠陥場 / 転位ダイポール / 疲労き裂 / 幾何学的に必要な転位 / 転位組織 / ダイポール
【研究成果の概要】
繰返し負荷の作用下でFCC金属結晶に発現する固執すべり帯(PSBs)の数理モデルを構築するとともに,それを用いた転位パターニングのシミュレーションを実施すために,まず粒子描像をもち,かつ刃状・らせん成分の分離が可能で,しかも結晶欠陥場の幾何学的描像と明確な対応をもつように,新たに転位密度テンソルを定義した.
次に,複雑系の熱力学による検討を介して集団転位の自己組織化を表現するための反応-拡散方程式を導出した.その際,可動刃状成分のダイポール化による不動化および不動らせん成分の交差すべりによる可動化を表現する反応項を新たに導入した.また,交差すべり後のらせん成分の対消滅ならびに熱活性によるダイポールの対消滅を表す生成・消滅項を追加した.
得られた反応-拡散方程式を2次元問題へ適用し,寸法効果パラメータが現れるように無次元化を行い,線形安定性解析を施してTuring構造の発現条件ならびに同構造の特性波長を予測した.また,2次元差分シミュレーションを行い,Vein構造およびLadder構造の空間パターンが実験事実と整合するよう諸材料パラメータを同定した.本モデルには寸法効果パラメータの存在により相似則が成立せず,刃状転位のVein構造およびLadder構造の波長をともにほぼ1μm程度に固定することができることを確認した.さらにLadder構造が最初にVein構造に類似した等方性構造から分岐して発現する様子を再現するとともに,らせん転位が交差すべりによって単調減少した後,定常状態においてその可動成分がわずかに残存する様子をも再現し,本モデルの妥当性を確認した.
なお,ミクロ場で発現した転位構造が結晶の加工硬化に及ぼす影響を結晶塑性論の硬化則に反映させてミクロ場-マクロ場を連動解析するマルチスケールアナリシスの構築については今後の課題である.
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2000 - 2001
【配分額】3,000千円 (直接経費: 3,000千円)