塑性ヒンジ領域に新材料を用いることにより地震後の復旧を要しない橋脚の開発
【研究分野】構造工学・地震工学
【研究キーワード】
地震 / 断層 / 交通施設 / 震災対策 / 耐震設計 / 地震動 / 台湾・集々地震 / トルコ・ボル地震 / 橋梁 / 地震対策 / 鉄筋コンクリート / 免震設計 / 新技術
【研究成果の概要】
首都圏に代表されるように、近年の都市機能の円熟化と複雑化にともない、大地震時といえども都市機能の停止が許されない時代を迎えており、インフラストラクチャーの地震被害に対して、いつまでも大地震時には損傷はやむを得ないといった発想ではなく、積極的に地震被害を受けず、地震後の復旧も必要としない構造物を開発することが求められるようになってきている。本研究は、このような背景の下に、大地震時に要求される曲げ変形特性を有しつつ、地震によって損傷せず、従って地震時にも機能を確保できると同時に、地震後に復旧が不要な橋脚を開発しようとするものである。
このため、橋脚の曲げ塑性変形によって損傷を生じるのは塑性ヒンジ領域と呼ばれるわずかな領域でしかないことに着目し、この領域に高性能ゴム等の復元力特性に富み、高面圧に耐えられる新材料を用いると同時に、高強度の鋼棒等によって軸方向にプレストレスを導入する等によって、目標とする4%ドリフトまでの橋脚変形に対して、塑性ヒンジ部の損傷を大幅に軽減できる橋脚の開発を目指した。
本研究では、塑性ヒンジ部に設置可能な材料の選定からスタートし、高面圧下での繰り返し載荷実験等から、免震支承に使用される高減衰ゴムがこれにふさわしいことを明らかにした。次に、塑性ヒンジ領域に高減衰ゴムをどのように設置するかについて、基本設計法を開発し、これに基づいて5体の1/8模型(断面400mm×400mmの正方形、有効高さ1.35m)を用いた繰り返し載荷実験を行った。この結果、ゴム層と橋脚躯体およびフーチングは固定する必要のあること、橋脚躯体とフーチング間の過度なせん断変形を防止するためにせん断キーが有効であること、これらを与えることにより開発目標とする4%ドリフトの変形に耐える構造とできること等を明らかにした。さらに、ファイバー要素解析に基づいて、軸方向鉄筋やコンクリートの損傷特性を分析した。こうした結果に基づいて、改良版の橋脚模型の設計方法を明らかにし、新たに6体の1/8模型に対する繰り返し載荷実験を行い、塑性ヒンジ区間にアンボンドのPC鋼棒による引張抵抗メカニズムやゴム層厚等の効果を検討した。この結果、開発目標とする4%ドリフトまで損傷を軽減した橋脚を建設可能であることを明らかにした。ただし、今後の課題として、塑性ヒンジ区間では、一般の鉄筋ではなく、より変形性能の高い鋼材を使用することが求められることも明らかにした。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
市川 篤司 | 鉄道総合技術研究所 | 研究開発推進室 | 主査(研究職/">(Kakenデータベース) |
渡邊 学歩 | 東京工業大学 | 大学院・理工学研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
睦好 宏史 | 埼玉大学 | 工学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
堺 淳一 | 東京工業大学 | 大学院・理工学研究科(日本学術振興会) | 特別研究員 |
庄司 学 | 筑波大学 | 機能工学系 | 講師 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2001 - 2003
【配分額】13,600千円 (直接経費: 13,600千円)