東アジア諸国における消費行動の比較分析-家計調査ミクロデータによる数量分析-
【研究分野】経済統計学
【研究キーワード】
貯蓄 / 消費 / 所得 / ライフサイクル / 家計調査ミクロデータ / 貧困 / 遺産 / ライフ・サイクル・モデル / 失業リスク / 借入制約
【研究成果の概要】
モヴシュクの研究では、ライフサイクル仮説に基づく消費行動分析に関し、年齢効果に注目した新手法を提案した上で、6カ国(日本、米国、英国、イタリア、台湾、タイ)の家計調査ミクロデータを用いて比較分析した。この研究はノンパラメトリック分析であり、伝統的な先行研究結果と比較し、理論的な年齢効果に対してこの新手法がより適合していると判明した。
ホリオカは、日本のミクロデータを用いて消費貯蓄行動の様々な研究を行い、以下3つの結果を得た。第一に、退職後の高齢者が貯蓄を取り崩しておりライフサイクル仮説と整合的であること。第二に、日本の貯蓄率は以前よりも高くはなく、負債が増大している。第三に、90年代日本の長期停滞時に、消費は景気を下支えしており、原因は民間投資停滞であって、政府政策に問題があった。
澤田は、韓国のパネルデータを用いて、通貨危機に対する家計への影響分析を行った。そして、私的トランスファーと豪奢財消費削減が重要なリスク対処法であった事が判明した。フィリピンの家計パネルデータ分析では、90年代の貧困削減要因において、土地等の物的資産ではなく、人的資本と非農業所得の重要性が増大した事が分かった。
野村は、ミクロデータを用いて、日本の流動性制約を検証した。日本の負債行動はライフイベント(結婚・出産・進学等)と関連しており、ライフサイクルを考慮した検証が必要である。住宅、教育・自動車、その他ローンについて、タイミングと金額を段階的に決定するモデルを構築し、流動性制約を考察した。
山下の研究では、東アジア諸国における消費行動の比較に関し、所得格差と貧困に焦点をあて、金融危機が与えた短期的及び中期的な影響を分析した。そして金融危機後に各国が実施した社会保障政策の効果を検証した。
【研究代表者】
OLEKSANDR MOVSHUK (MOVSHUK Oleksandr) 富山大学 経済学部 助教授
(Kakenデータベース)