韓国社会における都市化の過程に関する文化人類学的研究
【研究分野】文化人類学(含民族学・民俗学)
【研究キーワード】
都市化 / 移住 / 適応 / 結社(アソシエーション) / 過疎化 / 民俗文化 / 住民運動 / 伝統の創造 / アソシェーション / 新興住民 / 儀礼 / 過疎 / 郷友会 / association / 老齢化 / キリスト教 / 人脈(ネットワーク) / 韓国 / 日本 / 人口変動 / 文化人類学
【研究成果の概要】
韓国における都市化をめぐる研究課題として掲げた、(1)歴史的なアプローチによる伝統的都市の特質、発展、変容、(2)都市化に伴う農漁村の変化、民俗文化の変容、(3)都市における移住者の人脈と組織、(4)都市における家族、教育、儀礼などの変容、(5)都市住民におけるキリスト教会、について各地の経験を踏まえて具体的な事例の記述と分析をおこなった。(1)については、王朝時代以来の首都漢陽の中心性についての文献に拠る調査(吉田分担)と、大邱およびその周辺農村の都市化に関して親族集団に焦点をおいた調査研究(嶋,岡田分担、劉協力)が行われた。(2)については、過疎化と老齢化が村の諸活動や生業に及ぼす影響や民俗文化の風化について、西海岸と東海岸の漁村および島嶼地方の農村の事例が扱われ(鈴木、伊藤分担)、深刻な実態が浮き彫りとなった。(3)については、地方出身者による同郷組織(郷友会、同窓会、宗親会)について珍島および済州島の事例が取り上げられ、大都市の雑居的状況における地方出身者における人脈の重要性が考察されている(伊藤、大野分担)。(4)については、ソウルと大邱における夫婦家族における育児、教育、結婚、死をめぐる問題と人々の対応が課題となったが、当初想定された以上に多岐にわたる新しい動向が視野に入ったため、実際に取り上げられたのはその一部に留まった(李、雀、岩本分担)。(5)については、ソウル周辺の新興都市イルサン市における開拓教会の活動を通して、キリスト教の現状と都市新住民との関連を考察している(秀村分担)。全体として、韓国における都市化が余りに急激であったため、都市化をめぐる社会問題が大変多岐にわたって深刻であり、予想以上に重要な研究課題を提起していることが明らかとなり、今後の研究計画にとっても大変有意義なものとなった。
【研究代表者】