『日本霊異記』の史料論的研究―東アジア仏教説話の比較―
【研究キーワード】
日本古代仏教史 / 東アジア仏教 / 日本霊異記 / 東大寺諷誦文稿 / 中国仏教説話・僧伝・仏教類書 / 地方寺院 / 仏教法会 / データベース / 中国仏教説話 / 日本古代
【研究成果の概要】
前年度に引き続き、九世紀前半に成立した日本最古の仏教説話集として知られる『日本霊異記』について、東アジア仏教世界の中における位置づけ、古代における説話集編纂の歴史的意味、その背景にある同時代の仏教活動の実態を明らかにするため、研究実施計画に基づき、以下の三つの視点からの基礎的作業を同時並行的に進めた。
①仏教説話の研究…前年度に引き続き、東アジア仏教世界の中での位置づけを明らかにするために、『日本霊異記』との比較研究のための中国仏教説話として、『釈門自鏡録』『法華伝記』など唐代の仏教説話集についてのデータベース化を進めるとともに、これまで収集した史料の分類・整理を進め、分類項目の見通しを得ることができた。
②仏教活動の実態研究…古代の地域社会における仏教活動の実態を示す史料を収集し、多様な視点から以下の考察を行った。第一に、古代日本の地方寺院と村堂における仏教活動とその機能についての研究を論文として発表した(刊行は2022年4月)。また地方寺院の性格と機能については、より詳細な考察を進め、次年度に論文として公表予定である。第二に、地方の寺堂の法会の説法で語られる儒教的言説についての分析を進めており、次年度で学会報告の上、論文として公表予定である。
③仏教思想の研究…第一に、前年度に本科研の主催にて開催した、2020年度仏教文学会12月例会シンポジウムの報告内容をまとめ、論文として発表した(刊行は2022年4月予定)。第二に、第一の課題の分析の過程で、中国仏教説話集の古代日本における特殊な受容状況の問題が明らかとなり、現在古代日本の聖教目録を用いて、中国仏教説話集等の史的位置について考察を進めている。第三に、第一の課題の分析の過程で、日中仏教説話集の序文の比較を行ったが、仏教類書・僧伝なども含めて行う必要性が生じたため、今後進めていく予定である。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)