盲目的学習アルゴリズムとそれに基づき自己学習可能なニューラルネットワークエンジン
【研究キーワード】
不揮発性メモリ / ニューロモルフィックシステム / イン・メモリ・コンピューティング / 新機能メモリ / ニューラルネットワーク
【研究成果の概要】
昨年度は、大きく分けて二つの研究実績をあげることができた。一つ目は、抵抗変化型メモリに重みを2値記憶するバイナリ・ニューラル・ネットワーク(BNN)の推論用アクセラレータにおいて、回路を構成するMOSFETの閾値電圧の変動による推論精度の劣化の影響を補償する学習方法を提案し、回路シミュレーションにて効果を実証できた点である。すなわち、推論チップが完成した後に、このチップに含まれている差動増幅回路のオフセット電圧を測定し、それらの値を学習プログラム中の二値化回路(活性化関数に相当する)の引数のバイアス値として設定することにより学習を実行することで、オフセット電圧が数十ミリボルトまで大きくなっても、推論精度の劣化がほぼゼロであるという結果を得ることができた。これは、一昨年度の研究成果に比べて、より精度劣化の回復度が大きく、より実用性が高いものと期待できる。二つ目は、磁気トンネル接合素子(MTJ)の確率論的な動作を行う回路をシミュレーションするためのコンパクト・モデルを提案し、実際にSPICEにVerilog-Aの言語を用いて組み込み、更に確率論的動作回路としてスパイキング・ニューラル・ネットワーク(SNN)に使われるリーキー・インテグレート・ファイアー(LIF)型のニューロン回路を新たに提案設計してこれの動作を検証したことである。一昨年度の研究成果として提案したMTJモデルは磁気メモリ(MRAM)などの特性予測などの回路シミュレーションに有用であるのに対し、この新たなMTJは、磁気モーメントの回転角(θ)の熱厚音による確率的な変動を記述した方程式を解くことで表現されているモデルであり、SNNに使われるニューロンの動作などの確率論的回路の動作予測に適用できるものである。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)