量子ニューラルデバイスに関する基礎的研究
【研究分野】電子デバイス・機器工学
【研究キーワード】
ニューラルネットワーク / 量子ニューラルデバイス / 周波数多重並列化 / 量子波デバイス / コヒーレント型ニューラルネットワーク / 複素ニューラルネットワーク / カオス / レーダ
【研究成果の概要】
本年度は、以下に示すような大きな研究成果を挙げることができた。本研究は、量子ニューラルデバイスに関するまさに基礎的研究であり今後、具体的は量子ニューラルデバイスの実現という最終目標を目指したあらたな研究をさらに推進してゆく予定である。
1 デバイス設計の基本原理の確立と定量的な解析:キャリアのエネルギーと学習との関係について、光波をキャリアとするコヒーレント型ニューラルネットワークを想定して、理論的な解析とシミュレーションを行った。周波数空間を並列化のための情報空間として利用する場合の学習について、詳しい解析とシミュレーションを進めた。特に、学習前の初期条件と学習結果の周波数領域での汎化の特性との関係について研究を進めた。その結果、ニューロン結合の透過率と遅延時間を適応的に調整してゆくバックプロパゲーション学習において、キャリア周波数領域と遅延時間領域の両方の空間で、極小誤差を実現するためのパラメータが周期的に存在し、ちょうど双曲線状の細長い谷の並びを形作っていることが理論的に示されシミュレーションによって確認された。その結果、その谷を越えた学習は通常は不可能であることが示された。したがって有意味な汎化を実現するためには、ニューラルネットワークの初期条件はある一定の範囲に限定されることが明かとなった。しかし、その限定された初期条件は、実際にニューラルネットワーク・ハードウエアを構成してゆくために大きな困難になるものではないことも、同時に確認された。
2 マクロな電子回路による基礎原理の確認:マクロな高周波電子回路によるニューロ情報処理システムを構築し、マイクロ波およびミリ波の領域において、電磁波(光波)デバイスとしての量子ニューラルデバイスの基礎原理の確認を進めている。具体的には、反射波の位相をも検出可能なレーダ装置のプロトタイプを構築し、複素信号として対象空間の2次元的な一次情報を得ている。この信号を、フォン・ノイマン型計算機の上でソフトウエア的に並列に複素ニューラルネットワーク処理することにより、アダプティブな空間計測および認識を実現する実験を進めている。その結果、並列に処理される2次現画像に大きな並列性があるほどニューラルネットワークの高並列性による利点を充分に引き出すことが可能となることなどが認められ、さらに短い波長(高い周波数)のキャリアを利用した実験を行うことを予定している。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1995 - 1996
【配分額】2,500千円 (直接経費: 2,500千円)