高圧凝固プロセスによるアルミニウム合金複合材料開発の基礎研究
【研究分野】金属加工
【研究キーワード】
高圧凝固 / 複合材料 / 高力アルミニウム合金 / Al-Li合金 / Al-Li-Cu合金 / Sicウィスカ / アルミニウムの複合材料 / 時効硬化 / SiCウィスカ@アルミニウム複合材料 / 高圧鋳造 時効析出 / Al-Cu-Mg合金 / Al-Zn-Mg-Cu合金 / 結晶粒微細化
【研究成果の概要】
高圧凝固プロセスにより作製した高力アルミニウム合金/Sicウィスカ複合材料、Al-Li系合金およびAl-Li合金/Sicウィスカ複合材料の特性、品質を組織的に評価し、その時効析出挙動について研究を行った。
Al-2.3%Li-0.2%Zr、Al-2.3%Li-2.8%Cu-0.2%Zr合金を50〜100MPaの高加圧力下で凝固させることにより、ボロシティおよびボイド等の欠陥のない健全な凝固組織が得られ、この試料に溶体化熱処理を施しても、膨れ等の欠陥は発生せず、試料全体の機械的性質も良好で場所による値の変動がないことが明らかとなった。また、Sicウィスカブリフォ-ム中にAl-4%Cu-0.7%Mg、Al-5%Zn-2%Mg-1.4%Cu,Al-2.3%LiおよびAl-2.3%Li-2.8%Cu合金溶湯を100MPaの高圧力で含浸凝固させることにより、ボイド等の欠陥がなく、Sicウィスカと母相合金との界面の結合状態も非常に良好な複合材料が得られた。これらの複合材料は時効熱処理において焼入れ時の硬さが高く、200℃以下で時効硬化を示す。Sicウィスカの体積率の増加に伴ない順次硬さの値は上昇するが、時効硬化量は減少した。一方、200℃以上の熱処理では焼入れ時の高い硬さがそのまま維持された。ずれの複合材料においても、Sicウィスカ周辺部に多くの転位の発生が認められた。この過剰な転位は、アルミニウム合金母相とSicウィスカとの大きな熱膨張計数の差(約10:1)により焼入れ時に導入されたもので、Sicウィスカを含有しない合金材料とは異なる時効析出挙動を示した。すなわち、時効熱処理時において、焼入れ時に凍結された過剰のvancancyがこのような転位等の2次欠陥にsinkするため、G.P.ゾ-ンの生成の抑制、遅滞化が起こり、粗大な中間相の不均一析出が競合して起こるため母相の溶質濃度が低下し、G.P.ゾ-ンの生成量が減少することから、時効硬化量の低下が生じた。このような傾向は、硬化に最も寄与する析出相が、G.P.ゾ-ンであるAl-Cu-Mg合金の複合材料で顕著であった。
【研究代表者】