波長可変半導体レーザーを用いた共鳴アブレーションによる中性子線量評価法の開発
【研究分野】エネルギー学一般・原子力学
【研究キーワード】
共鳴イオン化 / レーザーアブレーション / 同位体分析 / 波長可変半導体レーザー / 核変換生成物 / 中性子線量評価
【研究成果の概要】
本研究は、原理的に高感度かつ高選択性を持つレーザー共鳴イオン化質量分析(RIMS)法を用いて、工学的な極微量核変換物質の定量分析技術の確立と新しい応用展開(特に、中性子線量評価への適用)を目標としており、その具体的な研究課題として、波長可変半導体レーザーをベースとし、1波長のレーザーで試料元素のアブレーションと共鳴イオン化を同時に行う「共鳴レーザーアブレーション(RLA)」現象を活用した計測システムの開発と、RLA現象自体の素過程の実験的解明及び理論モデルの構築を行うことが2本柱となっている。
本研究における主な成果は、次のようにまとめられる。
(1)RLA現象に関する系統的な基礎実験データを収集した。
(2)世界に先駆けて、RLAの実験結果(検出感度と元素選択性のレーザー出力依存性)を定量的に説明できる理論モデル化に成功した。
(3)RLAの理論モデルに基づき、特定元素の最適検出条件を探索する手段を提示した。
(4)RLAに基づく極微量核変換生成物検出実験を試み、本手法に基づく中性子線量評価への具体的な適用手順とその技術課題(RLA過程で生成されるクラスタ-イオンの妨害問題など)を明らかにした。
(5)波長可変半導体レーザーと四重極質量分析器からなる工学的応用に適したRIMSシステムの構築可能性について、システム基本設計のための重要な知見と技術課題を明らかにした。
以上の研究成果を総合して、RIMSを固体試料へ適用する簡便な手段として、RLA現象を活用する技術をほぼ確立できたと言える。特に、その応用例として、中性子核反応で誘起された放射能測定を基本とする古典的中性子ドシメトリー手法に、従来は対象外であった安定同位体や長半減期核種を生成する中性子核反応の利用を加えた新たな中性子ドシメトリー手法の体系化に繋がることが期待される。
【研究代表者】