霊長類の樹上運動適応と人類進化におけるその意義
【研究分野】人類学(含生理人類学)
【研究キーワード】
霊長類 / ロコモーション / 形態 / 樹上生活 / 適応 / ヒト / 二足性 / 進化 / 二定性 / 筋線維組成
【研究成果の概要】
霊長類の樹上運動適応とその人類進化における意義について、日欧の研究分担者間の共同研究及び各分担者による個別研究が行われた。前者のうち、リバプール大と大阪大の分担者による研究では、中新世の化石ホミノイドProconsul nyanzaeの形態と現生霊長類の歩様及び力学的パラメータの組み合わせによるシミュレーションを行った結果、新世界ザル型、チンパンジー型よりもマカク型歩様が最も適合することが明らかにされた。また、パリ自然史博物館と埼玉医大、大阪大の共同研究により、ホルマリン液浸標本の筋に免疫組織化学的手法を適用して筋線維組成を明らかにするための基礎的研究が行われ、これにもとづき、運動様式の類似するニホンザルとアカゲザルの筋線維組成とその発達過程が酷似することが明らかにされた。さらに、ルール大、関西医大、筑波大の共同研究として、四足動物の前肢から胸郭への力の伝達において息こらえ(air trapping)が果たす役割について検討を加え、息こらえの樹上運動適応としての意義づけがなされた。
個別研究としては下記のものについて成果が得られた:1.霊長類とヒトを含む各種哺乳の四肢骨断面の力学的特性と運動様式の関連、2.化石ホミノイドを含む樹上適応型霊長類の手足の骨格の機能形態学的特徴(成長パターンを含む)と運動様式の関連、3.動作分析、床反力、筋活動などからみた霊長類樹上移動運動の特徴と、支持基体による影響、4.霊長類野生群の樹上活動時における四肢の使用様式とその頻度、5.ヒトの息こらえが下肢の非支持動作において果たす役割、6.三次元運動解析とモデル・シミュレーションによる、木登り型ホミノイドから地上型二足歩行者への進化プロセスの推定。
最後に分担者・協力者による国際ワークショップを開催して、これらの成果をとりまとめ、総括討論を行い、今後の課題を定めた。
【研究代表者】