イオンポンプによる能動輸送の構造的基礎
【研究分野】生物物理学
【研究キーワード】
イオンポンプ / カルシウムポンプ / 能動輸送 / 三次元構造 / 電子顕微鏡 / 構造解析 / 膜蛋白質
【研究成果の概要】
本研究は、イオンポンプの輸送サイクルの幾つかの状態での三次元構造を電子線構造解析によって可視化する事により、イオンの能動輸送の構造的実体を明らかにしようとするものである。対象とした筋小胞体カルシウムATPaseは、筋肉の弛緩時にカルシウムイオンを汲み出すポンプである。能動輸送の実体の解明には生理的に異なった状態の構造を解明することが必須であるが、本研究では特に、カルシウムが存在しない時にできるチューブ状結晶の高分解能解析と高カルシウム濃度でできる三次元結晶の構造解析に重点をおいた。チューブ状結晶に関しては、高分解能化のためのソフトウェアを代表者側が開発し、CrATPを結合させたもの、thapsigarginの結合部位を結合させたものについて解析を行った。この結果、ATP結合位置の同定(Biophys.J.発表済み)と8Å分解能での解析に成功した。thapsigargin存在下のものに関しては、10本の膜貫通へリックスが解像できており、イオン通路と思われる孔もみえる(Nature印刷中)。これは、日本側のソフトウェアと米国側の新鋭電子顕微鏡とが組合わさって得られた結果である。この目的のために、日本側が2度、米国側が1度渡航した。三次元微結晶に関しては、まだ手法的にも未確立であり、とりあえず7Å分解能で構造を解くことが目標である。そのために、代表者と分担者(小川)が渡米し、具体的な方針について討論した。また、膜面に平行に見た像が9Å分解能で得られ、カルシウム非存在下の構造とは大きく異なっていることもわかった。これも、共同研究の成果としてまとめ、投稿中である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
小川 治夫 | 東京大学 | 大学院・医学系研究科 | 助手 | (Kakenデータベース) |
STOKES David | スカボール分子医学研究所 | 準教授 |
|
【研究種目】国際学術研究
【研究期間】1996 - 1997
【配分額】5,300千円 (直接経費: 5,300千円)