樹木生理現象の数理モデル化に関する研究-森林環境における熱・水・二酸化炭素循環の記述をターゲットとして-
【研究分野】林学
【研究キーワード】
数理モデル / 相互作用系 / 気孔コンダクタンス / 光合成 / 根吸水 / ポテンシャル / 蒸散 / 樹体貯留水
【研究成果の概要】
植生体内に一旦蓄えられてから大気へ至る水の量は無視できないほど大きく、また、植生体内の貯留水は乾燥環境下においても気孔を開き光合成・蒸散を継続させる。樹木ではその物理的サイズ故に、樹体内貯留水が地表面のエネルギー交換過程に及ぼす影響は大きいと考えられる。樹体内貯留水は樹体内の各器官に流入・出する水量差の総和である。葉からの蒸散はポテンシャルの低下を生み出し、これが下端まで伝播して吸水と樹体内の水移動を生み出す。よって本研究では、SPACの中に樹体内貯留水を考慮した植生内水移動モデルを組み込むことを前提とし、蒸散、吸水、樹体内貯留水、樹体内ポテンシャル分布が統合的に記述されるようなモデルを構築した。樹体内の水移動・貯留に関して、(1)水は円錐形に近似された樹体の中で導管を模した細管中をポテンシャル流として移動する、(2)樹体各部位での流入・出差がそこでの貯留水量となる、(3)樹体内のある部位での貯留水は毛管圧により保持される、という条件のもとに、既往の気孔コンダクタンスモデルを連結させて、単木レベルでの吸水・貯留・蒸散および樹体内ポテンシャル変動を記述する非定常シミュレーションモデルを構築した。そして、単木レベルの水収支計測の結果(瀧澤ら,1996)から、樹木サイズ、樹体内水分特性等のモデルパラメータ導出と計算結果の正当性確認を行った。なお、本研究の成果は、Agricultural and Forest Meteorology誌に印刷中である。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1999 - 2000
【配分額】2,000千円 (直接経費: 2,000千円)