力学的相互作用に基づく血管新生における細胞往復運動の動態解析
【研究キーワード】
血管新生 / 細胞動態 / バイオイメージング / 生物物理
【研究成果の概要】
本研究の目的は、不均一な動態を示す細胞集団が統合された機能体である血管を形成するメカニズムの解明である。具体的には、血管新生におけるUターン動態を含む内皮細胞のマクロスコピックな動態特性および動態メカニズムを定量的に明らかにする。特に、細胞群の力学的相互作用が個々の細胞動態パターンに及ぼす影響を明らかにし、細胞動態メカニズムを細胞の力覚応答の観点から明らかにする。
前年度までに、マウス大動脈組織片を用いたin vitro血管新生モデル(大動脈リングアッセイ)において、内皮細胞が血管伸長方向に進行後、方向転換して新生血管部根元まで逆走する興味深い細胞往復運動(Uターン動態)を発見した。 ( N. Takubo, et. al. Sci. Rep. 9, 9304 (2019))。また、前年度確立した培養内皮細胞(マウス膵臓由来内皮細胞(MS-1))のみから構成されるin vitro 2次元血管新生モデルを用いてライブイメージングを行い、他の血管細胞からの動態への影響が無い内皮細胞固有の動態を観察した。これまでに開発した自動セルトラッキングシステムを用いて内皮細胞の1細胞動態解析を行った結果、本モデルでもUターン動態を含む不均一な内皮細胞動態が観測された。さらに、本モデルにおいて細胞配向の解析を行った結果、細胞外基質外の内皮細胞供給源において細胞集団のマクロスコピックな流れが存在することが確認された。このことから、内皮細胞供給源には細胞流が引き起こす不均一な応力場が発生していると考えられる。
今年度は、新生血管および細胞外基質外の細胞動態を定量解析するための細胞外基質精密成形技術を用いた血管新生モデルを確立した。このモデルを用いて細胞動態観察を行った結果、血管伸長と細胞外基質外のマクロスコピックな細胞流が関係することが確認された。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)