生物のかたちをつくるモルフォゲンの作用機構
【研究分野】発生生物学
【研究キーワード】
モルフォゲン / Dpp / Tkv / p-Mad / Mtv / 勾配 / リン酸化Mad / コンパートメント / パターン形成 / dpp / dad / brinker
【研究成果の概要】
Dppモルフォゲンの活性勾配はその受容体のレベルによって規定されている。受容体の発現を制御する新規遺伝子の機能解析を通して、コンパートメント形成とモルフォゲン勾配形成の共役機構を明らかにした。Dppモルフォゲン・シグナルは受容体Thickveins(Tkv)を介して核に伝えられる。Tkvの発現レベルは後部コンパートメントで高く、前部コンパートメントで低い。またDppを発現している細胞では最も低い発現レベルを示す。細胞が受容するDppシグナルを、細胞内伝達因子Madの活性化状態(リン酸化、pMad)を指標に可視化する方法を開発した。シグナルはDppを発現している細胞において非常に低く、後部コンパートメントにおける勾配は前部の勾配よりも急である。これはTKvの発現量で説明される。
Tkvと相補的な発現パターンを示す新たな系統を同定し、master of thickveins(mtv)と名付けた。Mtvは1つのZincfinger構造を持つほかはきわだったモチーフを持たない。クローン解析の結果、mtvはTkvの発現を負に調節していることが解った。ヘッジホッグはDpp発現領域においてtkvの発現レベルを抑制している。また、後部コンパートメントで発現するenがtkvのレベルを調節している。2重変異クローンの解析から、これらの作用がmtvにより担われていることを明らかにした。Enはヘッジホッグを介てDppモルフォゲンの発現を誘導するばかりではなく、その受容体であるtkvの発現をも調節し、Dppシグナルの強度分布パターンを制御する。mtvはこの共役を維持するためにenおよびヘッジホッグからのシグナルを統合する因子として働く。
さらにDppのターゲット遺伝子の発現を抑制している新規遺伝子brkを同定し、Dppはbrkの発現を抑制することによりターゲットの発現を調節していることを明らかにした。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
常泉 和秀 | 東京大学 | 分子細胞生物学研究所 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1998 - 1999
【配分額】13,400千円 (直接経費: 13,400千円)