原子間力顕微鏡によるタンパク質高分解能イメージング技術の開発
【研究分野】生物物理学
【研究キーワード】
原子間力顕微鏡 / AFM / タッピングモード / ティップ / 2次元結晶 / スーパーティップ / イメージング / タンパク質2次元結晶
【研究成果の概要】
タンパク質など生体分子の原子間力顕微鏡(AFM)観察には多くの困難がつきまとう。タンパク質は柔らかく、かつ基盤への固定が難しいことがその原因である。本研究では収束電子線を用いて作製した先鋭なカーボンティップ(スーパーティップ)を使用し、タンパク質2次元配列および1分子の高分解能イメージング法を開発した。
水中AFMでは、キャピラリカの消失により表面摩擦が減少し、像分解能の向上が期待できる。気水界面を利用してフェリチンおよびカタラーゼの2次元結晶を作成しシリコンウエハに転写した後、スーパーティップAFMにより水中でイメージングした。大気中の像と比べて明らかに高分解能であり、配列と分子形状を明確に認識できた。
さらに、AFMを実際のタンパク質研究で使うには、1分子のイメージングが重要と考えられる。まず、フェリチンおよびカタラーゼを種種の基盤に物理吸着させた。金属のスパッタ膜上に吸着した分子は安定であったが、走査中のティップによる横方向の力を受けて大きく変形した。そこで、横方向の力を低減し、さらに分子を安定化する目的で、フェリチンをカタラーゼの2次元配列に埋め込み、カタラーゼをストレプトアビジンの2次元配列に埋め込んだ試料を作成した。その結果、原子間力顕微鏡の走査パラメータの最適化を行えば、それぞれの1分子形状を水中でタッピングモードAFMイメージング可能であることを明らかにした。
10ナノメータ程の分子形状が明瞭に認識できるので、この方法を用いてタンパク質をマイルドに固定し、分子同士の反応の追跡を生理的条件下で試みるときなどに役立つものと考えられる。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1997 - 1999
【配分額】2,900千円 (直接経費: 2,900千円)