筋収縮系における細いフィラメントの再構築と構造機能操作
【研究分野】生物物理学
【研究キーワード】
筋収縮系 / 心筋収縮系 / アクチンフィラメント / ゲルゾリン / 高次構造の再構成 / 筋原線維
【研究成果の概要】
これまで骨格筋・心筋収縮系において、アクチンフィラメント(FA)切断蛋白質ゲルゾリンを用いて選択的に細い(アクチン)フィラメントを切断除去し、収縮機能を失ったFA除去筋モデルを出発点にして、これに適当な環境下で精製アクチンを加えて細いフィラメントの構造と機能とを再構築することを試みてきた。この試みは、特に心筋収縮系で成功し、最終的に、張力が平均で元のものの1.3倍にも達するという結果を得た。しかも、電子顕微鏡観察によって確かに細いフィラメントが再構築されており、その平均の長さがもとのものよりも長くなっていることが確認された。平均1.3倍の張力増強は、この再構成アクチンフィラメントの長さによってほぼ説明されるが、ある場合には2倍以上の張力増強が見られるので、未知の張力抑制因子を再構成しきれていない可能性も残されている。そこで心筋線維に存在する微量蛋白質についてこのような機能がないか検索した。今のところこれを支持する結果は得られていないが、今後さらに検討したい。ところで、これらの心筋収縮系の研究は、直径数十μmの心筋筋線維の束を用いて行われてきたが、光学顕微鏡下での構造解析研究を可能にするためには、直径数μmの心筋筋原線維を用いる必要がある。そこで試料調製法を工夫した結果、顕微操作・解析可能な心筋筋原線維が得られるようになった。これを用いて、心筋収縮系におけるコネクチンの弾性に関する研究(ゲルゾリン処理筋を含めて)を顕微鏡下で行った。
再構成実験に適した筋収縮系としては、遅筋(赤筋)や飛翔筋が考えられるが、予備的実験では有望であり、研究目的によって使い分けるのも面白いと思われる。本研究を通じて、このFA除去筋収縮系とその再構成系が、細いフィラメントの構造と機能を研究する上で今後ともユニークな実験系として重用されるであろうことが確認された。
【研究代表者】
【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1995
【配分額】2,200千円 (直接経費: 2,200千円)