酵母HOG経路活性化を制御するSsklの分子スイッチとしての役割とその分子機構
【研究分野】機能生物化学
【研究キーワード】
出芽酵母 / ストレス応答 / 高浸透圧 / MAPキナーゼ経路 / HOG経路 / シグナル伝達 / 酵母 / MAPキナーゼ / リン酸化 / Ssk1 / Ssk2 / Ssk22
【研究成果の概要】
環境変化に迅速に適応するため、真核生物はストレス応答MAPキナーゼ経路を備えている。出芽酵母には高浸透圧で活性化されるHOG経路が存在し、2つの独立した上流支経路(SHO1経路、SLN1経路)をもつ。本研究ではSLN1,SHO1経路活性化及び制御の分子機構を明らかにするための解析を行った。前者に関しては表題にあるSsk1が分子スイッチとして巧みにHOG経路の活性制御に関わることを解析した。後者については、SHO1経路に関わる複数の因子がアダプター機能を有し、互いにダイナミックに相互作用することで、巧妙にシグナルを伝達する仕組みを明らかにした。後者について以下に具体的に記述する。
我々はSHO1経路活性化に欠損を示すSte50のRAドメイン変異の高浸透圧感受性を抑圧するCDC42変異体の単離に成功し、Cdc42がSte50、Ste20それぞれと結合しアダプター因子として経路活性化に働く可能性を示した。またRAドメイン欠失によりSHO1経路活性化に欠損を示す変異型Ste50が膜局在配列を付加させることで経路を活性化させたことから、Cdc42との結合を介したSte50の細胞膜への移行が経路活性化に重要であることを明らかにした。以上より高浸透圧で活性化されたCdc42はSte20との結合を介しSte20を活性化すると同時にSte50との結合を介しSte50-Ste11複合体を膜にリクルートすることでSte20によるSte11のリン酸化を可能にすると考えられた。
さらに活性化したSte11はSte50とともに膜上のSho1の細胞質領域と結合し、Sho1と結合しているPbs2をリン酸化・活性化することも示し、SHO1経路において複数の因子がそのアダプター機能により精巧に各因子間の相互作用を調節し、ダイナミックなシグナル伝達を可能にしていることがわかった。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2005 - 2006
【配分額】3,500千円 (直接経費: 3,500千円)