速度論支配下で働く配位自己集合の原理の解明
【研究キーワード】
分子自己集合 / 速度論支配 / 環状自己集合体 / 数理モデル / 金属錯体 / 自己集合過程
【研究成果の概要】
2021年度は、速度論支配における配位分子自己集合の原理解明を目指し、数理モデルの構築およびその実験的実証に取り組んだ。数理モデルの構築については、最もシンプルかつ多様な自己集合体のモデルとしても十分に機能するM4L4四角形を選択した。これについて系中で起こりうるすべての反応を考慮した反応ネットワークモデルの構築を達成し、これを使い自己集合の数値シミュレーションを実施した。研究構想段階における思考実験で、分子自己集合の構成要素の加え方を変化させることで、経路選択が可能になり、熱力学支配における結果と異なる帰結を導き得ることを考えており、これを検証した。その結果、思考実験で考えていた経路選択と効率的な自己集合が起こることを数理モデルによる実証できた。さらに、これをPd2L4かご形自己集合について実験的に確認したところ、本質的に数理モデルと同じ結果が得られた。また、Pd2L4かご形自己集合の収率を通常条件と比べると、本条件の方が明らかに高く、さらにこの状態で加熱し熱力学平衡状態へ変化させると、収率の低下が観測された。これらの結果から、反応は速度論支配で起こり、経路選択によってボルツマン分布を超えて集合体を形成できたことが明らかとなった。このように、速度論支配における分子自己集合の経路選択の一般性に関する1つの原理を導き出すことに成功した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
高橋 聡 | 東京大学 | 大学院総合文化研究科 | 助教 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2021-07-09 - 2023-03-31
【配分額】6,500千円 (直接経費: 5,000千円、間接経費: 1,500千円)