分子ダイナミクス計測による架橋高分子材料の強靭化メカニズム解明
【研究キーワード】
高分子ゲル / ポリエチレングリコール / 分子ダイナミクス / 中性子準弾性散乱 / 分子動力学シミュレーション / 破壊力学 / 動的架橋
【研究成果の概要】
2021年度は、鎖長の異なる4分岐ポリエチレングリコール(PEG)鎖を末端架橋することで得られる不均一高分子ゲルの伸長時における分子鎖ダイナミクスを調べた。単一鎖長のTetraPEGから得られる均一高分子ゲルと、アーム長の短いTetraPEGとアーム長の長いTetraPEGから得られる不均一高分子ゲルについて、延伸前における高分子鎖の局所ダイナミクスを比較すると、両者に差はなく、架橋不均一性は調整時における高分子鎖ダイナミクスに影響を与えないことが分かった。一方で、架橋点間分子量が不均一な高分子ゲルを延伸すると、均一高分子ゲルでは見られなかった分子運動が凍結された成分が観察された。この運動が凍結された成分は、短い架橋点間部分鎖に応力が集中したことによって生じたと考えられ、実験的に応力集中鎖を観察することに成功した。高分子ネットワーク中に存在する応力集中鎖の比率は、短い部分鎖比率の数倍であり、短い部分鎖だけではなく、その周辺の鎖にも応力が集中していることが分かった。均一高分子ゲルと不均一高分子ゲルの一軸延伸試験を行ったところ、不均一高分子ゲルの破断伸び、破断応力は均一高分子ゲルの場合よりも小さく、伸長に伴う応力集中がマクロな力学強度の低下と相関していることが示唆された。また、分子動力学シミュレーションによって高分子鎖伸長シミュレーションを行ったところ、一定以上の張力を与えることで、PEG鎖が伸び鎖となり、分子運動性が抑制されることが分かった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
藤本 和士 | 名古屋大学 | 工学研究科 | 助教 | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)