CARSを用いたフェニルチイルラジカルの構造化学的研究
【研究分野】構造化学
【研究キーワード】
チイルラジカル / アミノフェニルチイルラジカル / 共鳴CARS / 電子構造 / ラマンスペクトル / 分子振動
【研究成果の概要】
フェニルチイルラジカルは、対応するジスルフィドを紫外光で照射して生成する安定性の高いラジカルであるが、強い発光をともなっているために通常のラマン分光法が適用できず、そのために振動スペクトルによる構造研究が未だなされていない。本研究課題は、過渡共鳴CARS分光を行うことによってこの困難を克服し、よって所期の目的を達成しようとするものである。本年度の補助金を得て次の成果が得られた。
1.高速前置増幅器(スタンフォードリサーチシステム社SR-440:151千円)を購入し、これを現有のBOXCAR積分器に装置し、加えてパーソナルコンピュータ(NEC PC9801U×21他一式、323千円)を接続することによって、レーザー装置の駆動とデータ処理及びフロッピーディスクへのデータ転送を可能にした。そのためのインターフェースとソフトウエアを自作した。
2.ビス-(P-アミノフェニル)ジスルフィドのラマンスペクトルを測定して類似分子の結果と対応させ、続けて、この分子の溶液をN_2レーザ一光で照射して生成したP-アミノフェニルチイルラジカルに色素レーザー光を用いた過渡共鳴CARS分光で照射して生成したP-アミノフェニルチイルラジカルに色素レーザー光を適用して同ラジカルのラマン振動の検出とその電子共鳴効果の観測に成功した。得られた結果に対して、親分子及び可視紫外スペクトルなどの既存データを参照しながら解析・考察を加えた結果、上記ラジカルにおいては、従来考えられているようなキノノイド構造が関与する共鳴構造はむしろ少なく、C-S単結合性を多く有するS局在形ラジカルである可能性が高いことを指摘した。
現在、置換基の位置及び種類が異なるフゥニルチイルラジカルについて実験を進めている。
【研究代表者】
【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1988
【配分額】1,600千円 (直接経費: 1,600千円)