ハイパーラマン分光法によるタンパク質二次構造研究の新展開
【研究キーワード】
ハイパーラマン分光 / 非線形分光 / 生体分子 / 振動分光 / ラマン分光 / 生体関連分子
【研究成果の概要】
本研究では近年さまざまな系へと応用が可能になってきたハイパーラマン分光法を、生体分子をはじめとする複雑な分子系へと適応することを目的としている。初年度に得られた研究の成果は以下のとおりである。
(1) アミド結合のモデル分子であるN-methylacetamide(NMA)およびdimethylformamideをハイパーラマン分光法で測定し、今後のハイパーラマン分光法のペプチドおよびタンパク質分子に対する展開の基盤を形成した。NMAについて、以下の詳細な解析を行った。赤外・ラマン分光法で得られたスペクトルとの比較を行い、ハイパーラマン信号がそれらと異なるユニークなスペクトル・パターンを与えることを見出した。特に、アミドIバンドについては赤外・ラマンスペクトルのピーク位置とそれぞれ異なった位置にハイパーラマン信号が得られ、これをノン・コインシデンス効果によるものであると考えた。ハイパーラマン分光におけるノン・コインシデンス効果は本研究で初めて観測されたものである。また、入射光波長を変えた測定を行い、さらに偏光分解測定から偏光解消度を見積もることで、可視光励起では二光子電子共鳴効果の影響が顕著に出ていることを見出した。
(2) ポリペプチドを用いたハイパーラマン分光測定を行った。ポリ-L-グルタミン酸(PLGA)およびポリ-L-リシン(PLL)の水溶液を、温度およびpHを変化させることで二次構造を制御した測定を試み、二次構造とハイパーラマンスペクトルの相関を検討した。現在再現性を確認中であるが、二次構造の変化に伴ってハイパーラマン信号が変化していると思われる結果が得られている。
以上の研究から、ハイパーラマン分光法によってタンパク質分子の構造を赤外・ラマン分光法と相補的に研究できることを示したといえる。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)