次世代の観測的宇宙論にむけた原始銀河・銀河団の進化の数値的研究
【研究分野】天文学
【研究キーワード】
原始銀河 / 銀河団 / 観測的宇宙論 / 数値シミュレーション / 超新星 / 粒子法
【研究成果の概要】
本研究計画は輻射過程をとりいれた宇宙の構造形成の流体力学的取り扱いを目指して、原始銀河・銀河団の形成と進化を定量的に論ずる上で必要不可欠な宇宙論的流体力学数値計算コードの開発と、それらの相補的な解析的な理論モデルの構築を目的としてきた。具体的には、以下の4つの成果を得た。(1)粒子法に基づく流体力学数値計算コードに独立時間ステップを採り入れるとともに、ガスと輻射の相互作用にかかわる物理過程を採り入れたコードを完成させた。(2)銀河・銀河団に対応するダ-クハロ-の重力的な形成率をあたえる公式を解析的に導いた。さらに、それをもとにして球対称モデルを仮定して個々の銀河団から熱制動輻射によって放出されるX線のスペクトルを時間の関数として計算し、それらの重ね合わせとしてX線背景輻射のスペクトルに対する銀河団の寄与を求める理論的枠組を構築することに成功した。(3)ハッブル宇宙望遠鏡が乙女座銀河団の銀河にセファイド型変光星を発見したことから、ハッブル定数が比較的大きな値をとることが確実となってきた。このことは、原始銀河・銀河団の進化を考える上で最も重要となる宇宙モデルのパラメータに対して重大な意味を持つ。そこで、我々の近傍宇宙に対して観測されたハッブル定数がどの程度宇宙全体の平均値と一致するかと言う確率的な考察を行った。その結果、局所的なハッブル定数の観測から得られる真のハッブル定数の値に対する下限値を解析的に求める事に成功した。(4)自転する超新星からの重力波形をいろいろな角運動量分析に関して求めた。その結果、そうした超新星が我々の銀河系で起これば、LIGOにより観測ができ、爆発のメカニズムについて新たな情報を与え得ることがわかった。また、遅延爆発メカニズムを研究するための陰的解法による球対称一般相対論的流体コードの開発に成功した。
これら過去2年間の研究成果によって、原始銀河・銀河団の進化の大規模数値シミュレーションを行うための準備はほぼ完成したものと考えられ、今後はできるだけ速やかに本格的な数値実験を開始したいと考えている。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
伊藤 誠 | 京都大学 | 情報処理教育センター | 助手 | (Kakenデータベース) |
山田 章一 | 東京大学 | 大学院・理学系研究所 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1993 - 1994
【配分額】2,100千円 (直接経費: 2,100千円)