マントル深部由来ダイヤモンドの起源・生成場と深部流体
【研究キーワード】
ダイヤモンド / マントル / 深部流体 / 高圧実験 / C-H-O流体 / 炭酸塩 / 包有物 / 炭素同位体 / 電子顕微鏡
【研究成果の概要】
本研究では,ダイヤモンド中に含まれる包有物の観察・分析と高圧実験によるアプローチを組み合わせ,未だ謎に包まれているマントル深部(サブリソスフェア)由来のダイヤモンドの起源と生成場,生成プロセスとそこにおける流体の役割りを明らかにすることを目的とする.昨年度は,ブラジル産の深部由来ダイヤモンドに含まれるサブミクロンサイズの流体包有物のTEM観察を進めたが,包有物内部に固体析出物がほとんど見られず,流体の化学的特徴までは明らかにできなかった.今後,観察対象試料を拡げ,またレーザー加工・Arイオンミリングによるより広域な研磨断面を作成し,手掛かりを見つけるとともに,ダイヤモンド内部の炭素同位体および微量元素分布を調べる.
一方,高圧実験によるアプローチでは大きな前進が得られ,C-H-O流体のソースとして用いるステアリン酸の炭素同位体組成(δ13C=~30‰)がほぼそのまま(分解によって生じる)C-H-O流体に引き継がれることを明らかにした.この結果は,炭酸塩マグネサイト(δ13C=~0‰)との固液共存系におけるダイヤモンド生成プロセスを考える上で,炭素同位体組成が有用なトレーサーとなり得ることを示すもので,本研究の目的達成へ向けての大きな一歩といえる.この成果を1月に開催された日本-ロシアの研究者が中心となって企画したオンライン国際シンポで発表し,また今夏フランスで現地開催される国際鉱物学会議(IMA2022)でも報告予定で,近く国際誌へ論文も投稿する.今年度は,これに基づき,炭酸塩-C-H-O流体共存系におけるダイヤモンド生成実験を様々な温度圧力条件で行い,ダイヤモンドの生成メカニズムを明らかにし,そこにおける炭素同位体分別挙動についても検討し,天然のマントル深部由来のダイヤモンドから得られる情報と比較考察をする.
【研究代表者】
【研究分担者】 |
M Satish‐Kumar | 新潟大学 | 自然科学系 | 教授 | (Kakenデータベース) |
鍵 裕之 | 東京大学 | 大学院理学系研究科(理学部) | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】18,070千円 (直接経費: 13,900千円、間接経費: 4,170千円)