試験管内遺伝的プログラミング
【研究分野】生体生命情報学
【研究キーワード】
DNA computing / Whiplash PCR / PWPCR / Tag-Antitag system / back-hybridization / mis-hybridization / Displacement WPCR / thermodynamics / DNA Computing / Biomolecular Computing / efficiency / strand displacement / statistical thermodynamics / 統計熱力学 / ヘリックス-コイル転移 / 融解 / DNAコンピューティング / DNAチップ / タグ-アンチタグ系 / ハイブリダイゼーション・エラー / Statistical Thermodynamics / Helix-Coil Transition / DNA Melting / DNA-based Computing / Tag-Antitag System / PNA-mediated Whiplash PCR / Hybridization Error
【研究成果の概要】
鞭打ちPCR(WPCR)反応では、ヘアピン構造をとるDNA分子を鋳型としたポリメラーゼ伸長を繰り返すことで、自律的な分子計算を試験管内で実装する。原理上、多くのNP完全問題を解くことができ、試験管内での進化計算(EWPCR)や、RNA-タンパク質融合法と組み合わせたプログラム可能なタンパク質進化(XWPCR)への応用も可能である。しかし、バックハイブリダイゼーション(BH)とよばれる自己阻害が、実用化に向けた大規模化への深刻な障害となる。BHはWPCRの過程自体による阻害であるため、反応条件の最適化や配列設計によって克服することは不可能である。
本プロジェクトでは、WPCRやその改良法におけるBHの影響を実験的に解析し、基礎となる計算過程の再設計を行い、特にXWPCRによる試験管内タンパク質進化に向けて最適化を行った。主な業績は、(1)処理効率の熱力学的モデル化の実験による検証、(2)高信頼度の「タグ-アンチタグシステム」配列設計のための結合平衡モデルの開発、(3)高信頼度の分子計算と固定化のための配列を進化させるソフトウェア「NucleicPark」の実装、(4)本質的な改良法である「Displacement WPCR(DWPCR)」の開発と実験による検証である。
DWPCRは、ポリメラーゼによる鎖置換と部位の保護によってBHを克服し、100%近い計算効率が達成できる。さらに、温度サイクルが不要であるため、生体内での応用が可能になる。プライマー配列が計算と分離されており、組換えタンパク質を不安定化する配列の翻訳が全くないため、XWPCRによってエキソン・シャッフリングを行うことが可能であり、より厳密に自然の進化システムを模倣できる。DWPCRや開発したモデルおよびソフトウェアは、特に進化プログラミング向けに最適化された、高効率な分子計算のための標準手法となることが期待される。
【研究代表者】