半導体ミスフィット転位網を利用した量子孔の電子論
【研究分野】固体物性Ⅱ(磁性・金属・低温)
【研究キーワード】
半導体 / 球状量子ドット / ミスフィット転位 / 転位ネットワーク / 転位交差点欠陥 / 第一原理電子論 / メゾスコピック系・局在 / 格子欠陥
【研究成果の概要】
半導体ヘテロエピタキシー界面でのミスフィット転位ネットワーク交差点で形成される球状量子孔(quantum hole ; QH)について、その電子構造の理論解明を目的とした。この目的の為に、3次元球量子閉じ込揚(SQD)で近似し、スピン占有状態と原子で知られているフント則に焦点を当てその電子状態を第一原理的に理論解明した。
電子の占有状態が必ずしも単純閉殻構造にならないため、同一量子ドット軌道(QDO)に対するスピン束縛を取り除いて変分原理を実行する非制限HF(unrestricted HF ; UHF)法を基本としたが、合成軌道角運動量Lの演算子に対する固有関数を得るため、Lを束縛してUHF近似を行う「拡張されたUHF法(exUHF法)」を提案し、その定式化を行った。その結果3次元SQDでは従来の2次元ディスク状QDとは異なる魔法数が出現する事を理論的に見出した。また電子間相互作用はQDO間の偶然縮退を解離させ、「SQDにおいては原子の場合と異なり、角運動量が大きな軌道が角運動量の小さな軌道よりもエネルギー的に低くなる」という固有の特徴が明らかになった.さらに本系に特徴的な合成スピンに関する縮退状態は合成軌道角運動量を新たな量子指数に選ぶとよく分離できることを見出し、同一スピン状態では大きな合成軌道角運動量を与える状態が基底状態となる興味深い事実を初めて指摘した。
一方転位ネットワーク系としてはGaSb/GaAs(100)およびInAs/GaAs(111)系を考察した。第一原理密度汎関数法および経験的強結合近似を用いた電子構造計算により、ミスフィット転位(MD)の原子構造とさらにその交差点およびネットワーク構造を明らかにした。前者はMDが互いに直交するネットワーク構造であるのに対し後者ではヘキサゴナル網目状と成り得ることを理論予測した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
武田 京三郎 | 早稲田大学 | 理工学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】萌芽研究
【研究期間】2002 - 2004
【配分額】2,200千円 (直接経費: 2,200千円)