分子固体中のポジトロニウムの研究
【研究分野】固体物性
【研究キーワード】
陽電子消滅 / ポジトロニウム / 分子固体 / C_<60> / HOPG / PTFE / 自由体積 / 陽電子ビーム / グラファイト / 表面 / 陽電子寿命 / テフロン / 低速陽電子寿命
【研究成果の概要】
分子性固体に陽電子を入射すると多くの場合、ポジトロニウムが生成する。本研究では、そのようなポジトロニウムに関する最近の重要な問題について、総合的に研究を行った。
まず、陽電子がC_<60>では単一の寿命をもつことを世界に先駆けて示した。寿命の値から、C_<60>中ではポジトロニウムは生成せず、陽電子は格子間領域に存在していると解釈した。これはその後発表された理論計算の結果とも一致している。
また、グラファイト表面の陽電子状態の研究を行った。装置は電子技術総合研究所のパルス化可変エネルギー低速陽電子ビームを用い、試料温度と陽電子入射エネルギーを変えながら、陽電子寿命スペクトルを測定した。その結果、、グラファイトに陽電子の表面状態が存在することを確認した。表面状態の存在にもかかわらずグラファイトから熱励起で直接真空中に放出されるポジトロニウムが観測されていないことについて、新しい解釈を提唱した。
PTFE(テフロン)中の陽電子寿命スペクトルと陽電子消滅2光子角相関スペクトルの温度依存性の相関関係を詳しく検討した。その結果、従来から使われているモデルでは、完全につじつまの合う解釈は得られないことがわかった。
また、将来の原子炉材料として重要なアルミナ単結晶を中性子照射し、等時焼鈍したときに生成するボイドの半径を、ボイド中のポジトロニウムを利用して推定した。また、焼鈍によって、ボイド表面へのアルミニウムの析出に関係すると思われる成分が表れることを確認した。
【研究代表者】