相互作用する量子多体系におけるトポロジカル秩序相の微視的理論
【研究キーワード】
トポロジカル相 / 量子スピン液体 / 量子ホール効果 / エンタングルメント
【研究成果の概要】
本年度は、量子細線を用いたトポロジカル相に対する微視的な模型の構成法を発展させ、空間3次元のトポロジカル秩序相やfracton相に対する量子細線の模型を一般的に構成する方法を提案した。これらの相は元の構成要素である電子やスピンとは異なる統計性を持った素励起(分数励起)によって特徴づけられ、トポロジカル秩序相では非自明な統計性に従う点状とループ状の素励起を持つ一方、fracton相では低次元の部分空間に閉じ込められた点状の分数励起を持つ。対応する量子細線の模型は、細線間の相互作用が十分強い極限において厳密に解ける模型であり、これらの分数励起の性質やそれにともなって生じる基底状態の非自明な縮退などを調べることができる。また、この構成法では従来の格子模型では実現できない励起ギャップのない表面状態を実現することができ、より広範なクラスのトポロジカル秩序相やfracton相を含むものであると期待される。これらの結果に関して論文の投稿準備を進めており、初稿はプレプリントサーバー(arXiv:2112.07926)に公開されている。また、日本物理学会2021年秋季大会において関連する講演を行った。
また、相互作用する1次元量子系における非線形輸送現象について論文(査読あり)を公表した。この研究において扱われた系はトポロジカル相とは直接の関係はないが、相互作用する量子系に特有の可積分性が断熱的な外場の印加のもとで非自明なカレントの振動現象を引き起こすことを示すものであり、量子多体系における応答現象の一般的な理解への一助になると期待される。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2020-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)