素粒子論に基づく超新星のカイラル輻射流体力学の構築
【研究キーワード】
超新星爆発 / ニュートリノ / 輻射輸送理論 / カイラリティ / 輻射流体力学
【研究成果の概要】
重力崩壊型の超新星爆発のメカニズムに重要な役割を果たすと考えられているのが、星の重力エネルギーの大部分を持ち運ぶニュートリノである。しかしながら、従来のニュートリノの輸送理論の数値シミュレーションでは超新星爆発を理論的に再現するのは困難であり、その爆発メカニズムは未だによくわかっていない。2019年度の研究において、我々は素粒子の標準理論から出発し、ニュートリノの最も基本的な性質であるカイラリティを考慮した「ニュートリノのカイラル輻射輸送理論」を系統的に構築した。2020年度の研究では、このカイラル輻射輸送理論をニュートリノが平衡に近い状況で解析的に解き、磁場に比例するニュートリノのエネルギー流が生じることを示した。
2021年度の研究では、この解析解に基づいて、非平衡ニュートリノによって核子や電子から構成される通常の物質にも磁場に比例する電流が生じ、その結果、強く安定な磁場が生成されることを示した。これは、マグネターのような宇宙最強磁場をもつ天体の新しい磁場生成メカニズムの可能性を与えている。さらに、この効果を取り入れた電磁流体力学の数値シミュレーションを実行し、この効果が十分強い場合には、超新星での電磁乱流が従来考えられていたエネルギーの順カスケードとは異なり、逆カスケードになることを実証した。本研究結果は、ニュートリノのカイラリティの効果が、超新星の流体力学的な時間発展を定性的に修正しうることを意味している。
さらに、円偏光した光子に対するカイラル輸送理論を曲がった時空に拡張し、重力場中で右回り・左回り円偏光の光子の軌道が分離する量子スピンホール効果を導出した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)